26


「ほら、見えるか?」
「うん…!すごい、綺麗だね」


エースが指差す夜空には、流れ星が煌めいていた。どうやらこれを見せるために私を連れてきてくれたようだ。甲板には他にも流れ星を眺めるクルーがいて、時々すれ違いざまにエースはからかわれたりしていた。


「今日、元気なかったからさ」
「え?」
「なんか落ち込んでただろ、今日。朝から騒がしくしちまったし、その、お詫びじゃねェけど、元気出るかなって思って呼んだんだ」


頭をかきながら照れくさそうに彼はそう言った。エースの優しさはまっすぐで眩しい。「ありがとう」と彼の顔を覗き込むようにお礼を伝えると、ますます顔を赤くして「別に」とそっぽを向いてしまった。可愛いな、なんて思ったことを知られたら、彼は拗ねてしまうだろうか。ふふっと思わず笑みをこぼすと、エースは安心したように笑って私の頭を撫でた。


「元気、出たなら良かった」
「私は元気だよ。ありがとう、エース」
「何かあったらすぐに言えよ?おれに出来ることならなんでもするからさ」


髪を撫でていた手は頬に降り真剣な目でそう励まされると、今度は逆に私が赤くなってしまう。マルコ以外で私が一番安心して一緒にいられるのはエースである。「私と友達になってくれてありがとう」と伝えると、彼は少しだけ戸惑ったような表情で私から視線を逸らした。


「エース?」
「いや、お前と仲良くなれて嬉しいよ」
「本当に?あ…友達って言われたの、本当はちょっと嫌だった…?」
「違うって!いや、違くはないけど…、いやでも、ヒナと仲良くなれて嬉しいのは本当だから!……もっと仲良くなりてェって、思ってるから」


手をぎゅっと握られて、エースは歯切れ悪くそう言った。この船に乗っている人たちは、お互いを仲間だと言っている。「友達」という言葉とは、少しニュアンスが違うのかもしれない。私は彼の言葉にうなずいて、「私も仲良くなりたいよ」と手を握り返した。エースはまた少し顔を赤くして、「あぁ」と小さく返事をした。


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -