38


「……随分地味な下着だな」
「えっ?」


ペローナちゃんとお風呂に入り、着替えをしている最中だった。じっと見つめられて何事かと思ったら、そんな一言が降ってきた。
下着について地味や派手などの感想を持ったことが無かったため、「そうかな…」と自分を見おろしてみる。確かに、薄水色の小さなリボンがアクセントについているだけの下着は、お世辞にも派手とはいえないものだった。対してペローナちゃんは、細いのにつくところにはしっかりと柔らかい脂肪がついており、その綺麗な体の曲線を可愛いレースの下着が覆っていた。


「ペローナちゃんの下着は、可愛いね」
「ふふん、そうだろう!」


どうやらお気に入りだったようで、私の誉め言葉に機嫌を良くしていた。私に下着を着飾ろうという気持ちが沸かないのは、ペローナちゃんのように素敵なスタイルを持ち合わせていないからかもしれない、と少し自嘲気味に思った。
服を着て髪の毛を乾かしていると、ペローナちゃんが隣に来て私を不思議そうに見つめた。


「なあに?」
「そんな色気の無い下着でも、アイツは何も言わないんだな」
「…アイツ?」
「ミホークに決まってるだろう。まあ、なぎさが着ていればなんでもいいんだろうな」


はぁ、とため息を吐いてペローナちゃんは隣で化粧水を手に付けて肌を整えだした。
突然出てきたミホークさんの名前に私はつい動揺してしまう。どうして私の下着と、ミホークさんが関係あるというのだろう。
私の疑問はそのまま顔に出ていたようで、顔を上げたペローナちゃんは「はぁ?」とまた大きな声で疑問符を口にしてそして先程よりも盛大なため息を吐いた。


「お前まさか、まだアイツと寝てないのか?」
「ミホークさんと?確かに、夜一緒に寝ることはあんまり無いかもしれない…。私、寝相良くないから、迷惑かけちゃいけないし」
「そういうことを言ってるんじゃなくて……」


やれやれ、と言った風にペローナちゃんは首を振った。私は彼女が何を言いたいのか分からず、首をかしげて髪の毛を乾かす作業へと戻った。ペローナちゃんは「これじゃ逆に同情すら出来るな」となんだかちょっと呆れたように独り言を零していた。
髪の毛を乾かし終えて一緒に部屋へ戻る途中で、今度一緒に下着を選びに行こうと誘われる。


「構わないけど…」
「私がとびっきり可愛いものを選んでやる」
「ありがとう…?」
「早速明日街に連れて行くように頼まないとだな」


頼むのはなぎさの役目だからな、とペローナちゃんは言って、私を自分の部屋ではなくミホークさんの部屋の前までやや強引に連れていき、「あとはよろしく」と去って行ってしまった。
何かミホークさんにお願いごとをするときは私を介して頼む、というのがペローナちゃんだけでなくゾロ君も通例となってしまっている。確かに、自惚れているつもりはないが、ミホークさんは私にとびっきり甘いから、私から頼めば大抵のことは聞き入れてくれてしまうのだが…。
なんだか煮え切らない気持ちを抱えつつ、私は扉をノックした。
 



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -