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「何作っているの?」
「これか?サングリアだ」
「サングリア?」


キッチンで、何やらペローナちゃんがフルーツを切り刻んでいた。
今朝は早くからゾロ君とミホークは稽古で外に出ており、私は特にすることもなく暇を持て余していた。今日の食事当番であるペローナちゃんの様子を見に厨房へと向かうと、そこは甘いお酒の香りが充満していた。


「美味いワインに果物を漬け込んで作る酒だ。知らないのか?」
「うん、知らなかった。なんだか、可愛い見た目だね」
「そうだろう!ワインもフルーツもたんとあるからな。暇ならなぎさも一緒に手伝え」


ペローナちゃんに誘われて、私も一緒に作業をすることにした。
とても楽しそうにフルーツをワインに入れていく姿を見て、ふと彼女はこの大量のワインを何処から持ってきたのかが気になった。


「ねえ、ペローナちゃん、このお酒ひょっとして…」
「ん?あぁ、ミホークのところから持ってきたやつだぞ」
「ええっ、ミホークさん、良いって言ったの?」
「まさか!許可なんて取るはずがないだろう!」


自信満々にそう言う彼女は、これが特にお気に入りだと既に作ってあるサングリアを一杯渡してくれた。もう一週間は寝かせているとのことだ。ということは、この作業は一週間以上前から行われていたということだろうか。私は苦笑するが、それでも楽しそうなペローナちゃんを見るとしょうがないか、という気持ちにもなった。
ミホークさんが集めているワインをこんなたくさんサングリアにされてしまったと知ったら、怒られるだろうか。ミホークさんは甘いものをそんなに好まないし、フルーツが浸かって糖度が高くなってしまったこのワインを飲むことはきっと無いだろう。

私はそもそも、ミホークさんが怒る姿を見たことがない。そう考えると、ちょっとだけ、もしかしたら彼に怒られるかもしれないと期待してしまう自分がいることに気付いてなんだか恥ずかしくなってしまった。

ペローナちゃん自慢のサングリアは程よく甘くてお酒を普段ほとんど飲まない私でも美味しく感じられた。


「これ、美味しいね」
「私の自信作だからな。まだまだあるから、たくさん飲めよ」
「じゃあ、私はおつまみ作ろうかな」
「それならこのチーズも使えばいい!」
「…それも多分、ミホークさんが自分用に用意したやつだと思うけど……」
「細かいことは気にするな。美味い酒は美味いものと一緒に飲むべきだ」


ペローナちゃんはそう言ってグラスやらお皿を用意しだした。ミホークさんへの罪悪感を抱きつつも、甘いお酒の香りに逆らえず私達は昼間から女子会を満喫することとなった。




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