15


久しぶりに船の外へ出ると、そこはジャングルのような島だった。

少し前くらいから船は何かと慌ただしかった。いつになく船は揺れていたし、船内ではバタバタとクルーが走り回っていた。どうやら物凄い怪我人を乗せているらしく、ローはその人の治療にかかりきりだった。一命は取り留めたようで、今いるこの島でしばらく療養をするらしい。
島に着いてからも私は中々船から降ろしてもらえなかった。危険だから、と言われていた。確かに、外からは時折大きな音や叫び声が聞こえたりした。
ようやくローの許可が出て、大地に足をつけるとなんとも言えない感慨深い気持ちになった。これまで生きてきて、これほど陸地から離れたことがあっただろうか。しかし船を降りたはいいものの、海岸を少し歩くとすぐに幕が張られていてそれ以上奥へは行ってはいけないそうで、実質自由に動ける範囲はとても狭かった。


「この奥に何があるの?」
「女人国なんだってさ。なぎさは女だから入れるんじゃねぇか?入れたら中どんな感じだったか教えてくれよ」


ペンギンにそう説明を受けたが、一人で島の中に入る勇気は無かった。
ローを探すと、そこには私が再びこの世界に落ちてきたときに助けてくれた老人と、それから麦わら帽子をかぶった男の子がいた。


「あ、もしかして……」
「あれ、お前なぎさかあ?久しぶりだな!」
「知り合いなのか?」


シャボンディ諸島でローを探す手伝いをしてくれたルフィ君達。見ると彼の体は包帯でぐるぐる巻きだった。どうやら船でずっと治療されていたのはルフィ君だったらしい。


「あの時は一緒に探してくれてありがとう」
「おう、探してた奴は見つかったのか?」


私は頷くと、ローが私の隣に来て肩を抱いた。急に近くなった距離に少しだけ胸が高鳴る。何の話だ?と問いかけられて、シャボンディ諸島でローを探していた時のことを話すと、納得したように頷いていた。
そのあとすぐに船は出航することになり、私はルフィ君にもう一度お礼を言ってその場をあとにした。

船に戻り出航することをクルー達に伝えると、皆残念がっていた。どうやら女人国に相当な興味があったらしい。


「船長はなぎさがいるからいいかもしれないけどさぁ…」
「つべこべ言わず早く準備しろ」


シャチが未練たらたらと言った具合にローに愚痴を言ったが一蹴されていた。
再び海に潜ってすぐ、私はローに呼ばれて彼の部屋へと向かった。


「どうかしましたか?」
「…いや」


扉を開けるとすぐ前にローが立っていた。首をかしげると手を引かれて部屋に入り、扉が閉まったと同時くらいに抱き寄せられた。
最近、二人きりになるとローはすぐ私を抱きしめる。少し恥ずかしいけど、それよりも嬉しいという気持ちが大きい。私は彼の背中に手を回した。


「ローさんて、意外と甘えたがりですよね」
「…余裕だな」
「え?」


少し茶化すように言ってみたら気に食わなかったらしく、次の瞬間に私の足は地面から浮いていてローに横抱きにされていた。びっくりしているうちに、ベッドの上に降ろされる。ベッドとローに挟まれて身動きの取れない姿勢で、少し不機嫌そうに彼は私を見た。


「麦わら屋と知り合いだったのか」
「知り合いっていうか…。さっき話した通りですよ。この世界に戻ってきて、最初に会ったのが彼らで、ローさんを探すのを手伝ってもらったんです」


その態勢のまま、また抱きしめられる。首筋にローの息がかかり、少しこそばゆくて身をよじらせた。


「おれが最初にお前を見つけたかった」
「ローさん?」


ローは私の肩に顔を埋めた。きゅんと胸が苦しくなる。
この世界に戻ってから、ローは言葉で気持ちを伝えてくれる。それは今までのすれ違いがあるからこそだろう。言葉と行動と、両方で愛を伝えてくれる。これほど幸せなことがあるだろうか。私は彼の髪を撫でた。少し硬い彼の髪の毛をこうして撫でることが出来るのは私だけの特権だと思うと、とても満たされる気持ちだった。


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