03
それから私は武器屋やアイテム屋を回ったり、自警団のモンスター退治を手伝ったりして夜まで時間を潰した。そろそろいい頃合かと、改めてセブンスヘブンに向かう。
扉の前に立つと、外にまで賑やかな声が聞こえてきて、あぁ皆無事に帰って来れたんだと少し安心した。ひとまず扉を開けて、声を掛ける。

「こんばんはー」
「おぉ、ナマエじゃねぇか!」
「バレット、おかえり。魔晄炉大丈夫だった?」

私の声に真っ先に気付いたバレットが声を掛けてくれる。バレットはアバランチのリーダー的な存在で、そしてマリンのお父さんだ。マリン、心配してただろうから、怪我なく帰ってこれたようで私も安心した。

「あぁ、そりゃもうドッカーンと派手にやってやったさ!」
「ドッカーン、て…。七番街も、妙にざわついてたよ。やりすぎ」
「そりゃちょっとばかし想定外の規模だったが…星の為だ、しょうがねぇだろ」

ニュースでは魔晄炉爆破で持ち切りで、かなりの数の犠牲者が出たと報道されていたのを見た。バレットの言い分も全くわからないわけではない。それでも、無関係の人を巻き込んで得られる成果で、果たして皆が幸せになれるのだろうかとも思ってしまう。ただ作戦の後で殺気立っているバレットに、そんなことを言ったところで無用ないざこざを起こしてしまうのは目に見えているから、とりあえず苦笑しておくことにした。

「あ、ナマエ!いらっしゃい」
「ティファ」

そんなバレットとのやり取りに気付いたのか、カウンターの中からティファが手を振る。手招かれるままに、カウンター席に近付いて、見慣れない後ろ姿に気付く。ぱっと目を引く綺麗な金色の髪と、そして、見覚えのあるソルジャーの服。

「さ、座って座って。」
「あ、うん…」

促されるままに、その人の隣に座る。どうしてかはわからないけれど、心臓がばくばくと音を立てるのがわかる。何故だろう。初めて会う人なのに、知らない人じゃない気がするのは。

「ナマエ、紹介するね。こちら、クラウド。私の同郷の友達で、元ソルジャーなの。クラウド、この子はナマエ。私の友達」
「……ソル、ジャー…?」
「…ナマエ?」
「…っあ、ごめん。えっと、ティファの友達のナマエです───」

はっとして、当たり障りのない挨拶をしながら隣に座る人に顔を向けて、翠玉の瞳と、目が合う──。
遠くでティファの声が聞こえる。自分の声さえ遠くに聞こえるくらい、どくどくと嫌に鳴る心臓の音。この人は。この人は、誰?

「────っ」

その瞬間、頬を温かいものが流れるのだけがわかった。
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