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大人一人が横向きになってやっとの細い隙間を通って、子供たちの遊び場とやらに入る。中には大勢の子供が心配そうにムギくんを待っていた。

「エアリスを連れてきた!」
「もうだいじょうぶ。わたしたちに、任せて!」
「でもモンスターがでるんだ…!」
「安心して。この人たち、すっごく強いんだから」
「…元、ソルジャーだ」
「うん、モンスターなんてお姉ちゃんたちがすぐやっつけちゃうから」

安心させるように子供たちに笑ってみせたら、みんな頷いてくれてほっとする。それにしても、子供にソルジャーだなんて言ったところで、と内心苦笑した。こういうところは不器用だなと改めて思う。

「黒服の男は?」
「わかんない…。いつの間にか消えちゃって」
「今は、子供たちが優先だよ」
「そうだね、早く行ってあげよ」

エアリスの言葉に頷いて、1箇所だけ人が通れるくらいの隙間があいた木の柵を越えた。子供たちが言っていた通り、弱いモンスターがそこかしこにいる中を足早に駆け抜ける。

「ほんとにこの先にいるの?いくらなんでも、こんな中を子供が進める気がしないけど…」
「うん…でも、何かあってからじゃ、遅いから」

かなり奥まで行ってしまったのか、なかなか子供の姿は見えてこない。

「あ、あそこ!」

木製の簡易的な橋の上で突然立ち止まったエアリスが、池を指さした。そこには、ふたりの子供が池に浮いた瓦礫の上で怯える姿。それと近くにはモンスターがうろついてるのも見える。モンスターに刺激を与えないよう、細心の注意を払いながらそこに近づく。

「ナマエ、さっさとこいつらを片付けるぞ」
「はいはーい。エアリス、援護お願い」
「まかせて」

雑魚でよかった、と思いながらダガーを腰から引き抜き、モンスターに斬撃を与える。3人でかかれば、モンスターを殲滅するのはあっという間だった。すぐにエアリスが子供たちのところに駆け寄ろうとして、乗った足場が崩れたのを手を伸ばして助ける。

「あちこち崩れやすくなってるの!」
「きっと魔晄炉か爆破したせいだよ!」
「俺が行く」

怯える子供たちを見て、クラウドはそれだけ言うと軽々と瓦礫まで飛んで、ふたりを抱えて戻ってきた。ふたりの足元にしゃがんで、怖かったよね、と頭を撫でる。

「ありがと!」
「かっこいい……」

女の子が、クラウドを見上げてそう呟いた。その目はすごくキラキラしていて、思わず微笑む。

「うん、このお兄ちゃん、格好良いよね」
「…え、あ──」

もー可愛いな、なんて思いながら女の子の頭を撫でて、何気なく言った一言。頭上からクラウドが狼狽える声が聞こえて吹き出した。小さな女の子に褒められて、照れちゃったのか。

「へぇ〜?」
「…っなんだ」
「ううん、なんでも!さ、みんな、帰ろっか」

エアリスがニヤニヤしながら、何かクラウドに言ってた気がするけど内容までは聞こえなかった。特に気にすることもなく、私は子供たちと両手を繋いで遊び場まで帰ることにした。
ふたりともすっかりクラウドに懐いたようで、帰り道もずっとさっきの光景を真似て笑い合ってる。もう大丈夫かと繋いでいた女の子の手を離したら、ふたりは楽しそうに先を駆け出した。

「──っう、ぐ…!」
「クラウド?」

突然、いつかも見たように頭を抑えてふらつくクラウドに、何事かと駆け寄って顔を覗き込む。顔、真っ青だ。エアリスも側で心配そうに見ている。

「──ティファ…」
「ティファ?」

クラウドから呟かれたティファの名前。それに反応したのは、私じゃなくエアリスだった。頭痛は治まったのか、顔色が良くなったクラウドから手を離す。ティファと聞こえた瞬間に、またチクリと細い針で刺されるような痛みが胸に走ったのは、気のせいだったと思い込んだ。
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