01
とても、懐かしい夢を見た。

『ナマエ。俺、ソルジャー1stになったよ』
『ザックス、本当!?すごいすごい、おめでとう!』
『…ああ』

あの日は突然ザックスが家に来て、憧れのソルジャー1stになったんだと打ち明けられた。でも、ザックスの顔は何だか浮かない顔で。ちゃんと理由を聴くべきだったのに、何も聴けないまま、バタバタと任務へ向かったザックス。

『そんじゃ行ってくるわ!』
『うん。ザックス、彼女さんには挨拶した?』
『おう!…もし、俺が戻らないようなことがあれば、その時はナマエ、よろしくな』
『ザックス?何言って…』
『なーんてな!すぐ戻る。じゃあな!』

最後に交わした言葉を今でも鮮明に憶えてる。いつもはそんなこと言わないのに、おかしなことを言うから…。ねぇ、ザックス。あの時、ザックスは何か予感のようなもの、感じてたのかな。私にとって、ザックスは血の繋がりなんてなくてもたった1人の家族で、兄のような存在だった。今、どこにいるの?ザックス、やっぱり寂しいよ──。


「…う、」

やっぱり夢だった、と見慣れた狭い部屋を見て息を吐く。暫くこんな夢なんて見ていなかったのに。ザックスがいなくなってから、もう5年の月日が流れた。頭ではわかっているんだ。天真爛漫だけど律儀で優しいザックスが、何の連絡もなく消息を絶ったということが、どういうことなのかも。

「はは…夢のせいで、ナーバスになってるのかな」

嫌な考えを振り払うように、冷水で顔を洗う。冷たい水のおかげで、もやもやがすっと晴れていくのを感じる。洗面台から愛用の青い紐状のリボンを取って髪を結った。彼女へのプレゼントのついでだと、ザックスからおもむろに手渡されたコレ。かなり年季は入ってしまったけれど、大切なお守りとしていつも身につけているなんて、もし本人を目の前にしたら恥ずかしくて言えないんだけど。

「さて、セブンスヘブンに行ってフィルターの替えもらわないと」

丈が短い黒い半袖Tシャツに、ダメージ加工のデニムのショートパンツ。両腰のベルト部分に革製の鞘に納めたダガーを2本刺し、ショート丈の編み上げブーツを履く。我ながら適当な格好だな、なんて思いつつも、動きやすさを重視するとどうしてもいつもこの格好になってしまう。
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