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バレットがエアリスが入れられていた容器をガトリングガンで破壊して、無事エアリスを救出できた。

「ナマエ!大丈夫だった…?」
「うん、エアリスも、何もされてない?」
「平気だよ。みんな助けに来てくれて、ありがとう」

エアリスがそう言って微笑んだのを見て、ほっと安心する。目的は達成できたんだ、早くここから出ないと。全員頷きあって、その場を後にしようとした時、突然目の前にウルフのようなモンスターが現れて身構える。

「あれ、襲ってこない…?」

ただ襲ってくる気配はなく、私たちに睨みを効かせた後、それは宝条が先ほどまでいた場所に向かって飛び込むように走り去ってしまった。

「なんだぁ?ありゃ…」
「──行かなきゃ」

そう言って何故かエアリスも駆け出して、訳がわからないまま私たちもそれを追う。部屋を出た先で見たものは、フラフラと覚束無い足取りでエレベーターに向かう宝条と、それに向かっていく先ほどのモンスター。

「まさか…」

宝条を襲う気なんだと確信したけれど、それは一歩及ばず宝条がすんでのところでエレベーターに乗り込み扉に遮られた。くるりと踵を返して、ゆっくりと私たちのほうへ歩いてくるモンスター。再びクラウドが剣に手を掛けて、でもエアリスがそれを制止した。

「この子は、だいじょうぶ」

牙を剥き出しにして威嚇するモンスターに向かってエアリスがゆっくり手を伸ばして、その小さな頭に触れた。途端に急に大人しくなったように見えて私は首を傾げる。今、エアリスの手から光が流れ込むように見えたのは気のせい…?

「なんなんだよ、こいつ…」
「興味深い問いだ」
「えっ、喋った…?」

聞き間違いかと耳を疑ったけれど、その声はここにいる他の誰のものでもなくて。

「私とは、なにか。見ての通りこういう生き物としか答えられない。あれこれ詮索せずに受け入れてもらえると助かる」
「……XIII?」

ティファがその子の腕に入れられたタトゥーを見て呟いた。

「"レッドXIII"…。宝条がつけた型式番号だ」
「じゃあ、本当の名前はなんていうの?」

その問いには、レッドは答える気がさらさらないようで宝条が乗り込んだエレベーターに視線を移した。クラウドもエレベーターを見て一歩踏み出す。

「……クラウド?」

どこか様子がおかしいクラウドに声を掛けるけど、反応はない。何かに引き寄せられるように、フラフラとエレベーターへと進むクラウドに、ざわざわと胸が騒ぐ。

「……う、…ぁ」

小さく何かを呟きながら、一歩一歩進むクラウド。おかしい、やっぱり…。そう思っても、何故だか私の足は動かなかった。ティファたちも同じようで、不安げにそれを見ることしか出来ずにいる。
クラウドがエレベーターの扉に触れた瞬間、どさりと倒れて動かなくなった。弾かれたように傍に駆け寄って、名前を呼ぶけれど、クラウドはぐったりと気を失っていて反応は無かった───。

バレットがクラウドを担いで、エアリスの案内で安全だと言う部屋まで向かう。全員の口数が少なくて、聞こえるのは足音だけ。
やっぱり、また何かをクラウドは見たんだと思う。伍番街で私がセフィロスの幻影を見た時のように。そういえば、聞いたことがある。ジェノバ細胞には擬態能力があると。それは他人の記憶、感情を読み取る力。多分私がセフィロスを見たのは、レプリカ細胞もジェノバ細胞を模して作られたものだからなんだと思う。それがクラウドにも作用して、幻覚を見せている…?それから宝条が呟いた言葉。
嫌な予感が頭を過ぎる。もしかして、クラウドは埋め込まれたジェノバ細胞に打ち勝てなかった?クラウドには、ソルジャーの資質は……。
そこまで考えて、さすがに考えすぎかと頭を振った。バレットに抱えられてぐったりとするクラウドをちらりと窺って、私はざわめく胸を必死に抑え込んだ──。
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