京極堂 | ナノ


▼ コーヒーカップに揺れる想い


益田さんの淹れてくれた珈琲を飲みながら、言おうか言わまいかとまた思案する。
珈琲の入ったカップを見ながら、はあと溜め息を吐いた。

「どうかしたんですか?」

益田さんが目聡く察知して私の顔を覗き込んだ。

思わず顔をさっと避ける。

「どうも、してないです」

嗚呼、顔が赤らむ。胸がきゅんとした。

「いや、顔が赤いです。熱なんじゃ――?」

私の額に益田さんの手が躊躇なく添えられる。
心臓が痛い程脈打つ。
もう、益田さんがワザとやっているようにしか思えない私がいる。

益田さんが熱いですねぇと、心配そうに言った。

「本当に大丈夫ですか?奥の和室に布団敷きますからそっちに――」

肩に手を置かれ少し体が強張る。

「い、いいえ。大丈夫ですから」
「無理しないで下さい。僕に少しは頼って下さいよ」

ね?と笑う顔を見てしまいくらりとした。
ああ!と慌てた声がして、涙混じりの目で益田さんを見上げた。

「しっかりして下さい!嗚呼、風邪薬を先に飲みましょう」
「いいえ!大丈夫です。本当に!」

そうですか?と間近で聴かれ、また頬に熱が集まる。
ああ、汗が出て来た。涙も出て来た。

「名前さん、さっきより熱が上がってるじゃないですかァ!」

ああ、薬と言って私をソファーに座らし一人行こうとする益田さんの服の裾を思わず掴む。
え、と驚いたように振り返った。

「あの、風邪とか――熱じゃあないのです」

頭に疑問符を浮かべながら私の直ぐ近くで腰を下ろす。

「――わた、し」

意を決した。

「貴方が…すき、です」

顔を伏せる。
途端、何故だか泣けてきた。

「名前さん」

落ち着いた声に顔を上げると微笑した益田さんと目が合う。


コーヒーカップに揺れる想い!


(僕もいつ言おうかと、思ってたんです)
ケケケと笑った貴方に私は思わず抱きついた。
(大好きだッ)





別名、こんな益田は嫌だシリーズ。

益田さんは好きな人の前では余裕がないといい。



prev / next



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -