京極堂 | ナノ


▼ 待ち人来たらず

探偵社の扉を開けたのは、榎木津さんと会う約束をしていたからであって、彼の下僕には一切要はなかった。

なのにっ!

「何故、榎木津さんが居なくって、益田さんがいらっしゃるの?」

榎木津さんの特等席に当の本人は居らず、変わりに益田さんが対になったソファーの一つで紅茶を飲んでいた。

何かムカつきます。何故ですか益田さん。

「榎木津さんなら二時間ばかり前に出掛けましたよ。あ、名前さん何か用でもあるんですか?榎木津さんに」

私は会う約束したんですよ!約束!なのにどこ行ったの榎木津さんッ!

さあ、どこでしょうか。

そんなのんびりとした返事は止めて下さい。いちいち苛立ちます。

「益田さん、知らないんですか?榎木津さんの出掛けた先」

知りませんねと言う益田さんに思わずムカッとなりました。

「益田さんって……」

「僕ァ榎木津さんのことなら何でも知ってる訳じゃあないんですよ。」

だから溜め息吐かない!
びしっと指を私に指す。

「益田さんって……」

「それですよソレ!地味に傷付くから止めなさいッ!」
止めなさいって、なんで上から?

「どうでも良いんで、取り敢えず榎木津さんが帰るまで此処に居ても良いですか?」

益田さんはどうぞどうぞと言ってソファーに私と向かい合って座る。

何で移動したんだ益田。

「益田さん?」

「はい」

はいじゃねぇよ。
目を細めて相手を見るとすっと目を反らした。

「益田さん、貴方って大人気ない。」

「大人気ないとか言わないで下さい!」

ムスッとしたような顔で頬を膨らませた。



待ち人来たらず

益田さんうざい!

うざいとか言わないで下さい!



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