▼ 邪、よこしま
華奢な体つきをした名前を見る度に、言い知れぬ衝動に駆られる。
抱き寄せてみようか。
ああ、接吻でもしてみようか
そんな邪な感情も、彼女の瞳を見るとすっと胸の奥に引いてゆく。
「関口せんせい」
「ああ、どうかしたかい名前君」
濡れたような黒い目が此方を心配そうに見ている。
安心させる様に笑えば彼女は何時も通りに微笑む。
「ここの漢字が解らないんですよ。これです」
どれ、と身を近付けると彼女は上目遣いに此方を見て分かります?と問うた
「あせび」
「あせび?」
「ツツジの仲間だよ」
「へえ、あせびですか。」
有り難う御座いますと言って、又本に目を落とす。
睫毛が長い。
頬が朱い。
唇が赤い
衝動的に名前君と名前を呼んだ。
名前がはいと答える前に肩を押さえ、ゆっくりと――
口付けをした。
邪、よこしま
限りなく、邪
なんかもう、何書いてんのか解らなくなってきた。
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