▼ 好意
わたくしの事お嫌い?
おさげ髪で学生服を着た少女が、私に可愛らしい声で訪ねる。
――いや、僕は、
お嫌いなの?関口さんはわたくしの事が。
違うんだ。そうじゃないんだ。と言いたいのに、ううと唸る声しか出ない。
少女はじっと私を見て、良いのですと泣く。
貴方には好いて居る方がいらっしゃいますものね。
少女は嗚咽を漏らす。
違うんだ。僕は君が――
「関口さん」
関口さん、そう再度声を掛けられ、今まで机に伏せていた私は目を覚ました。
「あ、」
「何があ、ですか!雪絵さん心配なさってましたよ。タツさんが部屋から出ない、って」
雪絵が?
そう聞くと、はい。と返事した。
聞いていて心地の良い声だ。
先ほどまで、こんな声を聞いていた気がする。
ただ、どうも薄ぼんやりとしていて分からない。
「関口さん。もう、聞いてますか?」
「あ、ああ。聞いているよ。」
そう返すと、少女――名前はにっこりと笑った。
「それでですね、佃煮のお裾分けなのです。
関口さん、お嫌いじゃあないですか?」
ああ、と言ってから不意に夢の内容を思い出した。
好意
好きだよ。結構。
(夢ってやっぱり神秘的だよ、京極堂。)
prev / next