▼ 予知夢
這わせた指を彼女は嫌だと拒絶する。
口付けをしても唇をぎゅっと閉じ、此方の侵入を許さない。
鼻を押さえれば厭々の後に口をはあ、と一気に開く。迷わず舌を侵入させる。
鼻にかかる高い喘ぎ声が先へ先へと私を駆り立てる。
口を離せば涙を目に溜めて、厭ですと幽かな声を漏らした。
「離して、下さい」
甘い吐息を#名前#はこぼす。
「あきひ、こさん」
「嘘だぁぁぁあぁ!」
がばあと布団を捲って起き上がる。
動悸が激しい。
「名前が、名前がっ!あぁああああ!」
「どうしたんですかぃ先生!」
どたどたと音を立てて和寅が部屋を開けた。
「名前が古本馬鹿にっ!あぁああ有り得ない!僕は認めないッ!」
「落ち着いて下さいよぅ」
騒ぎを聞きつけたらしくオロカマスまでもが入って来る。
オロカマス!と呼びつけ名前を今すぐ此処へ呼べと言い付ける。
「お呼びになりました?」
「名前っ!?」
オロカマスが、実は名前さんお菓子の差し入れを持って来てくれたんですよ。
そう言ってへらりと笑った。
どうでも良い!そんな事!
僕はがばっと名前の腰に抱き付く。
「名前っ」
「わ、わっ――榎木津さん?」
「イヤな夢を見たンだ。ああ。イヤだ」
嫌な、夢?
名前が困ったように聴く。
うんと言えば腰に回した手の力を強めた。
名前の体が強張る。
「名前と京極が――うん?どうかしたのか?」
「い、いいえ!どうぞ続けて!」
ははと苦々しく笑う名前を見て怪しいなと思い、ふと名前の頭上を見た。
「―――あ」
「あ?」
見えた。
「京極ぅううう!」
「え、榎木津さぁあぁん」
僕は思わず事務所を飛び出した!
予知夢
(よくも僕の可愛い名前をッ!)
(榎さんのものじゃあないでしょ。僕のです。)
(ぐうっ!)
ならずの続編。的な。
榎さん報われない。
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