▼ ならず
「また京極は一緒に居たのかい?名前と」
半目になった榎さんはそう聞くと不機嫌そうに眉を寄せた。
ああ、嫌だ。逃げ出したい。
「こら、猿!お前も知っていたなら何故止めない!ああ、可愛い名前が妖怪馬鹿に……!」
榎さん、無茶言わないで。
「さっきから何を騒いでるんだ、榎さん」
今まで我知らずと言った顔で本を読んでいた京極堂が苛立たし気に言葉を発した。
「京極の浮気者!ああ、京極!お前名前と何をしてるんだッ」
何をって何さ
京極ぅうぅぅう!
なんて五月蝿いんだ榎さん
そう思いつつ、困惑気味に尋ねてみた
「き、京極堂。君はその、名前ちゃんと……」
「はっきり言い賜えよ関口くん」
「いや、だからその……」
言える訳ないだろ。
そう思い、京極堂を盗み見るようにして見ると
(わっ、笑っている……!)
「京極堂、君……」
「うふふ」
「名前がぁぁあ!」
何だコリャ
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