京極堂 | ナノ


▼ 一夜の憂い


交じったのが間違いだったかも知れない。



憂いを含んだ名前の瞳を見て、ふとそんな事を思った。

唇が微かに動く

「少尉」

男装をした彼女はそう言うと含み笑いをした。
短髪に軍服姿の名前は美しい少年のようだ。

「中禅寺少尉――?」
「聴いていますよ」
「そうですか。ねえ、少尉。堂島大佐がね、僕に言ったんですよ」
「何を――?」
「ふふっ。気になりますか?」

にゅっと顔が近づく。
身長に差があるため、彼女が背伸びをして顔を近付けたのだろう。

不意に、罠に嵌った気がした。

「少尉」
「気になりますよ。そりゃあね。」

口元だけで笑ってみせる。

「君と僕とは、一夜とはいえ交じった仲なんだ」

少し、彼女の瞳が驚いたように開いた。
完璧な少女に、少しの隙をみた。

その隙に入り込む。

「どうかしたのですか?」
「何にも」
「ほう?にしては足取りが不確かですよ」

背伸びしていた足がふらりとバランスを崩した。
とっさに抱き留める。

「はなし――」
「言わせない」

顎に手をやり、深く接吻をする。
鼻に掛かる高い声が耳を掠める。

どっと肩に衝撃があり、名前が押したのだと気付く。
距離が開いた

「ば――莫迦じゃないのかッ!僕が女だから侮ってるのか!」
「まさか。」

乱れた呼吸のまま話す名前が見てていじらしい。

「じゃあなんだ!少尉、貴男は」
「嫉妬ですよ」

しっと――?
肩透かしを食らったような顔をした。

「僕はね、貴女が愛しくて仕方ないんですよ。ねえ大陸の皇女様。」
「何を、」
「あの夜から」

目を細める。
皇女は気味悪そうに唇を噛んだ。

「僕は、今。本当に今だ。君を嫌いになったよ。」
「ほう。貴女にとって男を好きになるも嫌いになるも御有りなのですか?」

歩きだした彼女に向け言葉を放つ。
跫音が止み、くるりと此方を向いた。



一夜の憂い

君の知性的なヤリカタは好きだったさ

皇女はそう言ってニヤリと笑った。







芳子ちゃんが好き。と言いたいだけの夢

男装の麗人。
こんなシリーズどうだろう?


2009.2.1

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