短編 | ナノ



(会話文のみ)


「最近、おんなじ夢をよくみるんだ」

「へえーどんな夢?」

「夏休みにさ秘境?みたいなとこに愛車で行くんだよ。で、着いたら警官をトラックで轢いちゃうんだ」

「えー。あれ、須田くん免許持ってた?」

「免許とれる年齢じゃないっしょ、まだ。で、そうそう。轢いちゃって、うわヤベーってなってたらさ、その警官起き上がるんだ」

「慰謝料払えと?」

「違う違う。あっでも近いかも。無事でなによりだけど、慰謝料とか逮捕とか言われても困るよな。でね、まあ何言われるんだろうかって身構えてたら、突然その警官発砲するんだ」

「どっちも相当なワルだねー」

「だねえ。で、うわ俺死んだかも、って起きたら何ともないんだよ」

「夢だし」

「そりゃ夢だけどさ。なんか、何で平気かって説明されるんだよ。覚えてないけど。」

「そういうのが重要なのにー」

「だってその後ゾンビみたいな変な奴等に追いかけ回されるから、嫌でも忘れるって」

「B級ホラーもどきみたいな?あっ、あの警官もそのゾンビかもよ」

「えー恐いなそれ。あっでもそれなら轢いても平気だよな。」

「秘境の地のゾンビタウン的な?須田くん、よくそんなおぞましい土地に行くよね」

「夢だけどね。そういや、夢の俺、なんであんな所に行くんだろ。」

「オカ板関係だったりして。凸しに行って巻き込まれたとか」

「やだなー。夏休みとか暇だし面白そうで近場なら行こうと思ってたのに」

「地雷なんだよーたぶん」

「何度も夢に見るのは行くなって警戒?でもさ、オカルトマニアとしては垂涎ものじゃん」

「リアルゾンビ?」

「それもだけど、秘境の村とか!いかにもって感じだし。一度くらい体験したくね?」

「一度も嫌だよー恐い」

「うーん。なら三日間くらいなら?丁度村を探索できる日数ってこれくらいじゃね」

「三日間かあ、須田くんアグレッシブだよね。私は三時間でいいや」

「三時間かー。いや、でも俺はやっぱり三日くらいほしいなー」

「三日間リアルゾンビから逃げられる気がしないし、私」

「それもそうだよな。あっ、そうそう、そのゾンビって何回でも蘇るんだよ、怖くね?」

「打開策ないねそれ。ってか凝ってるね夢の内容」

「だよね、俺も思う。なんか追体験してるみたいな。」

「実はループしてて、夢の内容ってかすかに残った記憶だったりして」

「それ凄いね。それが本当なら俺、女の子との約束を守る健気な男になるなー」

「どんな約束?」

「内容は覚えてない。でもずっとその約束だけを支えに生きてる、みたいな」

「切ないね」

「切ないねー。まあ、夏休みのオカ板には気を付けとくよ」

「夏休みに明けに行方不明になってたりしたら笑えないもんね」

「ねー。」

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