(現代) 不思議な夢を見ましたと、朝食後のコーヒーを私に手渡しながら言った名前に、新聞紙を片付けながらどんな夢だったと尋ねれば、待ってましたと言わんばかりの表情で話し始めた。 「時代錯誤もはなはだしいと言われそうですがね、三成さんが甲冑を纏っているんですよ」 「私が?」 コーヒーカップを両手で覆いながら思わず笑ってしまった。 「確かに、時代錯誤だな」 「刀なぞ持ってね」 「戦にでも行きそうだな」 「ええ、それを私も思って、夢の中で訊ねてみたんです」 「戦に行くのかと?」 「はい。そしたらね、三成さん、南方へ参るのだと言って」 「南方へ」 「これも不思議と思って、三成さんをふと見たら今度は兵隊さんになってらして」 「兵隊にか。」 時代が下ったなと言うと、名前はええと頷いた。 「それに南方へだなんて。恐ろしいと思っていると目が覚めたのです」 「まるで死地に向かうようだな」 「恐ろしいでしょ」 指を組み合わせた名前に、私は思わず笑んでしまった。 「昔から生き別れることが定められているようだな」 「縁起でもない」 「分からないもので、私と名前は幾百年も前からずっと同じ定めの中生きているのかも知れない」 それではまるで運命の赤い糸のようですね、複雑そうな顔の名前に、私はやはり笑ってしまった。 「ならその度に私は、献花するのですね」 「苦労なことだ」 title 花畑心中 [prev|next] |