(さいれん) 冷たい手だと思った。 眞魚十字を必死になって握る求導師様の手に触れると、ビックリするほど冷たくて私は思わず自分の両手でその手を覆った。 「求導師様、求導師さま」 呼び掛けると、ハッとしたようにこちらを向いて苦々しく笑った。 「ああ、なんだ名前さん来られていたのですか」 気付けずにすみませんと詫びた。 「求導師さま、御手が冷えていますよ。随分と祈っていられたのですか」 「ああ、そうですね、祈り始めたのは昼前でしたからね」 今はもう黄昏時だ。それだけの時間膝をついて祈っていたのならば体が冷えて当然だろうに。 「慈悲深いのですね」 「いいえまさか。私はただ、そう恐ろしいのです」 「恐ろしい?」 「ええ。だから、神に縋っているのですよ」 そう呟くと求導師さまは体を丸めた。 お寒いでしょう。 いいえ、ただ恐ろしいばかりなのです。 「誰かに助けてと縋らなければ孤独に壊れてしまいそうで」 私は体を丸めた求導師様を、まるで覆うようにして抱き締めた。 「求導師さま、求導師様、」 眞魚十字が一瞬見えて、私は強く目を瞑った。 「神さまが空恐ろしい」 [prev|next] |