(さいれん) (少し注意) 昨夜のことが頭から離れないまま朝を迎えた私は、ゆっくりと隣に眠る人を窺った。 「求導師さま、」 自分で思った以上の高い声に咳払いをした。昨日のことが頭を過ぎったからだ。ああ、なんて、 「おはようございます」 「へっ」 両手で顔を覆うと少し掠れた声の挨拶が聞こえて顔を上げた。 「ま、牧野さん」 「…どうかしましたか」 「いや、あの、」 おはようございます、とまた両手で顔を覆いながら言う。 いちいち妙に気恥ずかしい。 「あの、」 「名前さん、どうしたのですか一体」 「昨日」 「昨日?ああ、昨日の、」 昨日の、で何故か会話が止まってしまった。どうしたのだろうか顔を上げると、こちらに背を向ける牧野さんがいた。 「牧野さん?」 「あああ、」 「き、求導師さま」 「求導師と今は呼ばないで下さい!なんて私は欲にまみれた人間だと色々考えている最中なんです」 「すっすみません」 「違うんです名前さんを責めたわけじゃなく、あああ自分でも何が言いたいのか分からなくなってきた」 そう言うと牧野さんは私と向き合う体勢に戻った。 何故だか知らないがとっさに顔が赤くなる。 「何と言えば良いですか」 「わかりません、わかりません」 「名前さん」 「は、はい」 「その、えっと」 互いに向かい合って顔を赤くさせる成人男女と考えると何だかおかしくなってしまって、牧野さんの言葉が途中だと言うのに吹き出してしまった。 「わっ私変なこと言いましたか?」 「違います、シチュエーションに吹き出してしまっただけです」 「はあ、まあ朝っぱらから何しているんだとは思いましたが」 思っていたのですか、と聞き返すと曖昧な返事が聞こえた。 「男女が同じ褥の中なにをしているのだろうと」 「なにって」 「あああ、名前さん下品」 「すみません」 「第一、事後です」 「牧野さん下品」 「ごめんなさい」 「…求導師さま」 「やめてください」 「なら慶さん」 「はい」 上目遣いに見れば、牧野さんがぎこちなく私の髪を撫でた。 「名前さん、名前」 「は、はい?」 「…呼んでみただけです」 髪から耳に移動した手がくすぐったくて身を捩ると、ぱっと手が離れた。 「慶さん?」 「まだ昨夜の余韻が残っているようです」 その言葉に私はまた顔を真っ赤にさせてしまった。 丸腰さまはベタベタに甘いくらいが良いかと思ったのですが、書き慣れていないために書いてる途中諦めたくなりました。 お互い初って良いなあと思ったのです。ピロートークのどこが初なのか分かりませんが。 [prev|next] |