(なんちゃって乙女ゲーム風バッドエンド) (しねた) 手を伸ばせば届くと思っていた。先を変えられると思っていた。いつか、あなたが愛して呉れると思っていた。 「名前」 ぼんやりとした目で少し先に横たわる声の主を見る。荒い息だ。きっともう、長くはない。 「…名前」 「はい」 体が重い。それでも今、動かなければ私はきっとずうっと後悔の中に生きることになるだろう。私は這々の体でその人に近付いた。 「私はここにいます」 「顔が見えん」 「それは私も同じですよ」 「悲しいものだ」 ゆっくりと手を顔に向ける。 「私は、死ぬらしい」 「…」 「負けたのだ、当然だろう」 「三成さん」 座れば、三成さんの手が私の髪に触れた。 「伸びたな」 「…もう一年以上、こちらにいますからね」 「そうか、早いものだ」 するりと手が地面へと落ちた。 「ああ、随分と、眠い」 「それは」 「名前、私は少し眠る」 ええ、そう頷こうとした瞬間、急に視界が晴れた。 土埃に汚れた装束、傷を負った体、細い首、 「三成さん」 思わず泣き縋りたくなった。しかし、それをできるような、可愛らしい人でも素直な人でもない。 「…朝になれば起こしますね。それまで、しばらく、お休みなさい」 うっとりと目を閉じた。 ああ、私は、後悔したまま一生を過ごすのだろう。 「私は、随分と慕っていたらしい、」 洞が峠(なんちゃって乙女ゲーム)でした。 いまだに本編をアップできていないのですが、無駄に短編やSSばかり増えていきます。多分これからもグダグダ書きます。 [prev|next] |