頭痛がした。吐き気と眩暈を催すものだ。 それを隠したまま元就様の御前へ参れば、氏は随分と嫌そうな顔をしてから私に指摘をした。 「体調が芳しくないのか、顔色が悪い」 「は」 それは、とサッと自分でも分かるほどに青ざめた。 「はい、持病がありまして。頭痛が」 「ほう、頭痛か」 「ええ」 こめかみを押さえたあと、指先の赴くまま髪を耳にかけた。 ずきりずきりと頭痛がする。視界がぼんやりとして、思わず眉を潜めて元就様を伺った。 「あ」 ぐらりと体が揺れた。どっと倒れると、新しい畳の匂いがふんわりと鼻孔に入って来て、思わずほうっと溜め息を吐いた。 「名前」 あっ、と元就様を見た。珍しく感情が直に出ている。珍しい、思ったまま口に出ていた。 「無駄口を叩くな」 「そう、ですね」 ぼうっと目の前が崩れる。瞼を閉じれば、熱く燃えているように赤い。 「元就様」 そう呟けば、体が畳から離れた。ぐらりぐらりとして、微かに目を開けば元就様の細かな毛先が見えた。 「無理をするな」 「はあ、あ」 「どうした」 「ねつが」 「ああ、高いようだ」 肩口に顔を伏せる。 「元就様、匂いがなさります」 「匂い?」 「生の匂い」 熱に浮かされたまま、そうっと元就様を見れば目元が和らげとなっていた。 ずきりずきりと酷い頭痛のまま、私は目を閉じた。 [prev|next] |