星の時計台 | ナノ
LOVE PHANTOM〜それが恋と気づかずに〜2


穏やかな春の日差しの中、肩を並べた少年達が河川敷をゆっくりと歩いていた。

明るい太陽の光に充てられた金色の短髪が風になびき、長めの前髪からちらちらと覗く瞳の色は日本人のそれとは違う濃い青色をしていた。
外見は全く同じにしか見えない彼等は、属に言う双子であり、混血児(ハーフ)でもあった。






「おっはよう。葵、翔! トロトロ歩いてっと遅刻するぞ〜」

そんな双子の少年達の背後から聞き慣れた声がする。

振り返った先には人懐こそうな笑顔を浮かべた、紺のブレザー仕様の制服を着た同年代の少年が立っていた。


「あぁ、雅明。おはよう」

どちらがともなく苦笑し答える金髪の少年。
はたから見れば、本当にどちらがどっちとも判断がつけ難い。

「お? 葵の方か」

挨拶を返してきたのが“葵”だと、雅明はあっさりと答えていた。


「へー、よくわかったね。葵の方だって……」

苦笑し返事をした少年の後ろから、片割れの少年が素直に感嘆の声を上げる。

「そりゃあ、な。何せ幼なじみだし、何年お前等を撮ってると思ってんだよ?」

少しばかり悪戯っ子のようにほくそ笑み、雅明は所持していたカメラを取り出した。



パシャ


すかさずシャッターを切り、ニッと口の端を吊り上げる。



「あ! 今の反則。撮っていいなんて言ってないぞっ」

「細かいこと言うなよ、翔」

「ダメ! 勝手に俺の兄ちゃんを撮るの無し。カメラマンの卵にもまだなれてないくせにぃ」


「何を〜?」

「………」


毎回の事ながら、自分を真ん中に挟み言い合いを始めてしまった幼なじみと弟である片割れの少年の様子に
葵はやれやれと肩を竦めて深いため息を漏らしていた。






***


「聞いたよ、美奈子。また倒れたんだって?」


真っ白いシーツのかかったベッドに横たわる少女を心配して、双子の少年達は始業ベルが鳴り響くのも厭わずに校内の保健室へと足を運んでいた。


「うん――‥ 心配かけてごめんね? 普通に生活するだけでも、苦しくて……また入院しなきゃだめなんだってママに言われちゃった」

てへ。と、弱々しい微笑みを浮かべ美奈子は言った。

葵と翔の二人は、学校に着くなり幼なじみであり従姉妹でもある少女――美奈子の発作のことをクラスメイトに知らされ
慌ててこの保健室に駆け付けたのだった。








「ね、葵。今度のコレクション、ステージ歩けるといいね」

「……美奈、またそんなことばっかり言って。今はそれどころじゃ‥――」

普通の生活すらままならなくなっている少女の言葉とは思えない言動に、葵は胸がしめつけられる思いに駆られた。
つい言葉を荒げそうになるのをどうにか抑え、掛け布団のシーツをぎゅっと握りしめた。



「だって、あたし……今度入院したらこんなふうに学校にも通えなくなるんだもの。葵と翔にもこうやって会えなくなるし、外出許可だってもらえるかどうかわからないの……」

いつも日だまりのように笑っていた少女の口から力無く紡ぎ出されるそれは、自分のことよりも他人のことばかり気にしていた彼女の悲痛な叫びにも聞こえた気がした。

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