Mental Panic〜お返しどうする?〜2
「何処へ行くんですか、シーナさん?」
「繁華街のギルドだよ。つべこべ言わずについてこいって」
城下に下りてきた二人は、大通りを抜けて繁華街を目指していた。
半ば強引に連れ出されたリシュカは、おろおろとしながらも先を歩くシーナを追って小走りに通りを抜けて行く。
様々な種族が集うシャーロムの城下街ゲシュタット――。
道行く人々を見渡し賑わう街中を歩いて行くと、繁華街から少し外れた路地裏にある道の奥に薄暗い建物が見えてきた。
そこは俗に言う“ギルド”と呼ばれる場所であり、情報収集のためにシーナが何度も訪れている店でもあった。
「シーナさん、ちょっと待って下さいよ〜」
びくびくと薄暗くなってきた周りの景色を見遣りリシュカは酷く怯えているようであったが、そんなことは気にもせずにシーナはギルドの入口の扉を開け放つ。
カランカラン
鈍い鐘の音が意外に広い店内に響き渡った。
「おぅ。いらっしゃい、シーナ。
……ん? 今日はまたえらくお上品なのを連れているな」
カウンター越しにグラスを拭きながらこの店の“マスター”と呼ばれる男が、入口に立つシーナとリシュカの二人に目を留めてそう話し掛けてきた。
「あぁ コイツはリシュカ、ルーの弟だよ。マスター、今日ルキフェルは来てるかい?」
「あー。いつもの通り奥の席にいるぜ」
「サンキュー」
投げ掛けた質問に答えたマスターに軽く礼を言って、シーナはまた店の奥の席に向けて歩き出す。
リシュカはその後を慌てて追いかけ、しばらくして二人の少年の姿はギルド内に集まる人混みの奥に消えて行った。
「よう、ルキフェル」
シーナはずんずんと遠慮することなく奥の席に入り、そこに座ってコーヒーをすすっていた青年に話しかける。
シルバーブロンドを思わせるような長い髪をポニーテールに結い上げた濃い紫色の瞳を持つ青年は、名前を呼ばれた声に気付きカップに口をつけたまま視線だけをこちらに向けた。
「ふふっ やぁ、シーナ。珍しいね、君がこんな時間にギルドへ来るなんて?」
ルキフェルはニコリと人懐こい笑みを浮かべ皮肉めいた言葉を口にした。
「そうでもねぇよ。なぁ ルキ、あんたこれから時間あるか?」
ルキフェルの微妙な皮肉をさらりとかわしシーナは反対にそう尋ねかけた。
「……え? あぁ、うん。特に予定があるわけではないけど」
「そっか。じゃあ、ちょっと付き合ってくれよ。
……あっ! お姉さん、カフェオレと紅茶を一つずつ頼むな」
答えたルキフェルの向かいに腰掛けながら近くを通りかかったウェイトレスの女の子を呼び止め、リシュカの意見も聞かずに勝手に飲み物を追加注文する。
そして自分の隣に座るようリシュカを促すと、そのままシーナは再びルキフェルに視線を戻した。