それからどれくらいの時間が経過した頃だろうか。
ぼうっとして月も星もない夜空を見上げていたシーナの肩に、真っ白い見事な毛並みをした小さなフェレットほどの大きさの羽を持った獣がふわりと舞い降りてきた。
『……クゥ……』
その小さな鳴き声に、ふと肩に乗ってきた白い獣を一瞥する。
「ニナ」
名前を呼ばれた白い獣――ニナは、また小さく鳴いてシーナの頬にすり寄った。
まるで元気を出せと言わんばかりに、涙で腫れた目元をぺろりと舐めてくる。
「……なに? くすぐったいよ‥――」
『……を……独りに、しないで……あげて……』
「え?」
微かに声が聞こえた気がした。
耳元に響くと言うよりは、りぃんと鈴の音が頭に響いてくるようなそんな感覚だった。
『……くぅん……』
ニナはもう一度鳴いた。
それからばさりと純白の羽をはためかせ、シーナの上着の袖をくわえてくいっと手前に引っ張る。
ついて来いと、早く来なさいと、まるでそう示しているかのように――。
風が凪いだ。
ニナはシーナの周りを優雅に舞い踊ると、暗闇の向こうにあるであろう今宵の宿に選んだ小さな洞窟へと戻って行ったのだった。
ー3/4ー
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