つい半年ほど前、父が他界した。
その日はやけに静かで、春も近いと言うのにとても肌寒く――‥明るい、満月の夜だった。
確かに父は病気を患っていて。
近いうちにと、王位継承の話も上がってはいたが……まさか、こんなことになろうとは思いもせずに‥――
私は急遽な父の死に納得がいかずに疑問を抱いた。
あの日の夜は何故かとても妙な胸騒ぎがして寝室を抜け出し、謁見の間に向かった。
どうして謁見の間だったのか? 何かに導かれるようにして、私はそこへ向かったのだ。
そして信じられない光景を見た。
――何故、そこにいたのか。
目にしたのは血に塗れたまだ幼い妹……そして、俯せになって倒れていた父の姿だった。
辺りは血の海に染まっていた。
倒れている父の側に茫然と座り込み、微かな光さえも遮断して
何も映していないかのような虚無の瞳の妹の姿に――ただ、愕然となった。
そこには、普段の明るく無邪気なひだまりのような妹の姿は無く、目の当たりにした現実から逃避するように……
ふっと意識を手放したその体は、静かにゆっくりと私の腕の中に崩れ落ちた。
もしかしたら、彼女はすべてを見ていたのかも知れない。
私が駆け付ける前に目の前で父の身に何かが起こったことを。
そして、もしも父の死が病気のせいではなく何者かが仕組んだ作為的なものであったとしたなら――
彼女は恐らくその一部始終を見ているのだ。
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