流れる砂の国2
「夜襲とは、卑劣な!」
そう吐き捨てるように呟き、拳をにぎりしめる一人の剣士――ダークブロンドと濃い青い瞳を持つ青年剣士はその手に大剣を握り、流れる兵士たちの中心に立っていた。
「エイリーク隊長! まだ兵士たちの準備が整いません。このままでは、城が陥ちるのは時間の問題かと…… すでに西国の正規軍が城門まで迫っています!!」
一人の兵卒が、そこに立ち尽くしていたエイリークと言う名の自らの上司とも呼べる青年にそう叫びながら走り寄って行く。 突然の敵襲に、城の兵士たちはおろかエイリーク自身も戸惑いを隠せずにいた。 普段なら冷静に状況を把握し、どうすべきか考えられるはずのことすら出来ず ただただ混乱して流れる兵士たちの様子を眺めていることしか出来ない。
「……っ、姫は? シャーロットは何処に‥――」
ふと気がついたようにエイリークは辺りを見渡し、守るべきこのラザック王家の王女の姿を探した。
「シャーロット様はまだ寝室におられるかと…… 隊長、兵に指示をお出し下さい。このままでは抵抗すらままなりません!」
「くっ! スタイナーは何処にいる? 彼に姫の護衛を……手のあいた者は私に続け。城門を死守するぞっ!!」
(――‥相手は魔導をたくみに操る西国の兵士……私の魔法剣がどこまで通用するかわからないが……)
内心でそんなことを思いながら青年は指示を請う兵卒の男を一瞥し、叫んでいた。
「は! すぐに手勢を集めます」
命令を受け取り、男は敬礼してそう答え腰に携えた剣を抜き放つ。 そうして動揺する若い兵たちをかき集めまとめて、彼はおおしく城門へと向かったのだった。
ー2/3ー
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