![]() ![]() 不気味なほど静まり返った満月の夜――。 まだ肌には冷たい夜風が宮廷の中庭に吹き抜ける。ざわりざわりと耳に煩くこだまするノイズのように、風にさらされた木々の葉が揺れていた。 カタン。 少年は寝室の窓を開け放ちそこから続くバルコニーへと出ていくと、白い手摺りに両手をかけて満天の星が広がる夜空を仰いだ。 暗い夜の闇にも映える見事な金色の長い髪を風になびかせ、星空を見つめる瞳の色は穏やかな春の陽気を思わせる優しい碧色。 夜空に浮かぶ大きな満月の光は、元々美しい少年の白い肌をいっそう際立たせ、艶めかしく魅せていた。 「――‥嫌な風だな。こんなに風の音が耳につく夜は……随分と久しぶりのような気がする」 少年は小さなため息を一つ漏らし、ぽそりとそう呟いた。 *** 月の雫・番外編T 〜放浪の聖騎士〜 ※因みにこの話、実は描きかけの漫画もあったりします。← [戻る] |