『バレンタイン・キス(仮)』
「待ちなさい、そら! そんな格好をして何処に行くの!?」
団地内の一角にある赤茶色の煉瓦造りの家の中から、そんな女性の声が響き渡った。
塀に囲われた家の白い門をくぐりそこから飛び出して来たのは、十代そこそこに見えるセーラー服姿の栗色の髪をした少女だった。
「ちょっとたつ兄の学校まで行ってくるー! すぐ戻ってくるから心配すんなって、母さん」
少女と呼ぶにはぶっきらぼうなもの言いで、そらは玄関口に立って心配そうにこちらを見ていた女性にそう答えた。
***
キーンコーンカーンコーン‥
授業を終えたベルが学園内に鳴り響いていた。
帰宅準備をするため、たつきは机の横に掛けていた学生鞄を手に取り、それを開けて中身を整理していた。
赤茶けた髪の色と白い肌が、真っ黒い学ランにはやたらと映えて見える。元々色素が薄いとは言え、モデル並みの長身と端麗な容姿は近隣の女子高生の間で噂になるほどの人気ぶりだった。
ざわざわ。
「おい、見ろよ。校門に女子高生が立ってるぜ」
「なんだなんだ? 誰かのカノジョじゃねぇの」
「おおっ なかなかカワイイ子じゃんか。あの制服って、聖アイル学園……」
ふいに、周りのクラスメイトが騒がしくなったことに気付き、たつきは教科書を整理していた手を止めた。
「なぁ 椎名。あの子、お前の幼馴染みじゃねー? 確か“あゆちゃん”て……」
「!?」
唐突に話を振られ、たつきは驚いて窓の側まで駆け寄った。そこから見える校門のすぐ近くに、確かに自分のよく知ったセーラー服姿の栗色の髪の少女が立っている。
「あゆ!? そんな、まさか……!」
見るに信じ難い光景に、たつきは思わず驚愕の声をあげていた。そうして彼はそのまま急いでそこから離れると、机に放っていた鞄を剥ぎ取るように手に持ち、教室から駆け出して行ったのだった。
◎途中までしか書いてない、現代版のお話の一部。そらはあゆの4つ下の弟で、たつきはあゆの1つ上の幼馴染み。(※関連作品ではあるけど、直接関係ないので設定資料には載せてません)
![](//static.nanos.jp/upload/m/mistick25/blog/13/2/201406111050571_th.jpg)
↑実はこんなオチだった。(笑)
そして身長差がウソ過ぎる件。
2014/06/11 10:10
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