※にっきに書き散らかしたゴミ文Gから派生したものです
 今作のみでも問題の無い仕様となっておりますが、宜しければゴミGも閲覧してやって下さいませ^^!

















L'amour du chat










理性を、試されている。






ソファの上で丸まっていた筈のルフィが、今は何故か、サンジの膝を枕に、くうくうと気持ち良さそうに寝息を立てている。
ルフィが、サンジの住むマンションを訪ねて来た、あの雨の日から三ヶ月。
居心地の好い場所と認識されてしまったらしく、頻繁にやって来ては食事を作れと強請られる様になった。
他意は無いのだろう。
純真無垢を、具現化した様な人間だから。
サンジの自宅へ押し掛ける事にも、こうして、温もりを求めて他人の足へ縋る事にも。
きっと、大した意味は無い。
胸を張って、コックコートを身に付けるという目標を持つサンジの作る食事が美味いからだとか。
室内を暖める役目を負った筈の、エアコンの調子が悪いから、仕方無く、唯一ある熱源(サンジ)を利用しているだけだとか。
多分、そんな処だろう。
警戒心皆無であるルフィの様子に、安堵と、そして少しの苛立ちを覚える。そんな事にもきっと、ルフィは気が付いていない。

(コッチはテメェに惚れてんだぞ。ちっとくれェ、警戒しやがれアホ)

心中で悪態を吐いたとて、ルフィが膝を解放してくれる訳もない。
反対に、居心地悪く身動いだ膝を追って、ぎゅうぎゅうと抱き付かれた。
だーっどうしようも無ェじゃねェかクソッ。
はあ、と一つ大きな溜め息を吐いたサンジは、せめて(心かき乱される)役得を堪能してやろうと、呼吸に合わせぴくぴくと動く、忙しないルフィの耳をそっと抓んだ。
一定量の水を被ってしまうと(飲む分には問題無いらしい)、猫の様な耳と、細く長い尻尾が生えるという、驚愕に値する特異な体質を持つルフィの耳は、今まさに黒く柔らかな毛で覆われている。
勿論、形は三角、毛並みも最高。つやつやのもふもふだ。
衣服の下に隠れた尻尾も手触り抜群。本当は思う様眺め、撫で回してやりたい処だが、ギリギリ、なんとか欲望を自制している。
下衣や下着が窮屈で邪魔だと、厭がって脱ぎたがるルフィをわざわざ押し止めて。
勿論見たい。死ぬ程見たい。思い切り撫で回したい。
けれど、室内を下半身裸で動き回られると、非常に迷惑なのだ。サンジの下半身事情に拘わる。
ルフィの下半身が自由になるという事は、それ即ちサンジの下半身も自由に暴走するという事。
ルフィが部屋に居る間、常に臨戦態勢だなんて笑えない冗談である。
だからこうして、せめてもの慰めとばかりに、ふにふにと柔らかい耳を弄くり回し、悦に浸るのがサンジのささやかな楽しみだった。
起きている間は、くすぐったいと逃げてしまう極上の手触りを、思う存分味わう事の出来る至福の瞬間。
親指と人差し指で輪郭をなぞると、ぴくぴくと敏感に反応する。
秘められた未開の地も、きっとこんな風に素直な反応を示すのだろう。ルフィの身体は何処もかしこも敏感だと、根拠無く確信しているサンジだった。

ああ早く触れ合いたい。道程は、まだまだ遠いのだろうけれど。


膝の上から退く気配など全く無く、生殺しを強いる天然の小悪魔(本人無自覚)に、仕返しをしてやりたい。そんな風に思ったのは一瞬。
すぐ様行動に移したサンジは、悪戯心を隠さず、ルフィの耳をかぷりと齧った。鼻先に、甘い香りが漂う。
手付かずの左耳へは、人差し指を伸ばす。すると、桃色の耳孔が誘う様にこちらを向いた。


「っひゃぁ…っ、!?」


耳孔へ人差し指を潜り込ませると同時、ざらりとした右耳の表面を舌で舐めてやった途端、膝の上で丸まっていた猫が驚いて飛び起きた。身体を起こし、異変を感じた耳を頻りに掻いている。
ううっと低く唸った後、やっと犯人であるサンジを見た。
普段とは異なり、猫耳と尻尾を生やしている間は、頗(すこぶ)る寝起きが悪いルフィ。
半分しか開いていない潤んだ瞳に睨まれようとも、恐怖心など湧かず、寧ろ目の縁を赤くした姿に興奮を覚えたサンジは、にやりと口元だけで笑む。


「サンジ!おめェ今なんかしただろ!?」

「いーや?何もしてねェよ。不細工な寝顔眺めてただけだ」

「嘘だっ!なんかした!耳になんかした!冷てェもん!!」

「あァ?夢でも見てたんじゃねェの?さっきみてェに、風呂場で暴れ回った夢とかな」


にやにや。
性質の悪い笑みを浮かべながら、キィキィ抗議するルフィの頭を撫で、知らん顔で落ち着けと促す。
耳は過ぎる程敏感だが、頭を撫でられたり、髪に触れられる事を好むルフィは、予想に違わずすぐに大人しくなった。
サンジの隣りに胡座をかき、まだ疑いを解いていない様子だったが、髪に触れられるまま、気持ち良さそうに目を細めている。
こういう処が、単純で可愛い。

「オラ、眠ィんだろ。ベッド行って寝てろ」

「んー…サンジは?」

「朝メシの準備してからな」

「んじゃあおれもまだ寝ねェ!」

「ガキはとっとと寝ろっての」

「サンジが居ねェと寒ィからヤだ!」

ルフィの爆弾発言に、見事固まったサンジは、銜えようとしていた煙草を取り落とした。
幸い、火は点いていない。が。そんな事はどうだって良い。
…今、ルフィはなんと云った?
サンジが居ないと寒い?それは一体どういう意味だ。
ルフィが訪れた日は、フローリングの床に布団を敷き、別々に眠っていたのだから、ベッドの上で体温を分け合った経験は無い。
そもそも、狭いベッドの上、男二人が一緒に眠れる筈もなく。サンジの理性を保つ為の砦でもあったから、不満を持つなどもっての他だった。
同じベッドで眠り、体温を分け合うなんて事になってしまったら、それこそどうなってしまうのか。己が行動に、責任など持てそうにない。
今だって。途方に暮れるサンジを不思議そうに眺めるルフィの薄く開いた口唇へ、キスをしたくてキスをしたくて、堪らないというのに。






……理性を手放す瞬間が見たいのなら。
今すぐ、その目を閉じてしまえば良い。















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遅筆ダンゴムシです。
2/22、にゃんこの日に間に合わせる予定でした。予定でした。予定でした…(´・ω・`)うぅっ
本当はにっきにあっぷしようと考えていたのです。こばなしとして。
でもまぁ、ルフィたんがにゃんこになっちゃったら、そりゃ理性とか飛びますよねツバキも飛びました。そういう事です。
どっかの1/2っぽい事に、今更気が付きましたなんかすんません…。

閲覧して下さり、誠に有難うございました!







11/02/23
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