甘ゆ










情事後特有の気怠い空気が漂う空間に、ちゅっちゅと可愛らしい音が途切れる事無く響いている。
頬や目元、顎先に鼻の頭。顔中に降る口付けがくすぐったくて身を捩っても、止まるどころか激しさを増すばかりで。
甘ったるい攻撃をくすくす笑いながら受け止めて、仕返しとばかりに動き回る頭を捕まえる。
ようやっと動きを止めたその下唇に吸い付くと、今度は剥き出しの肌をなぞられた。

「ぁ…っぅ、んっ」

零れる掠れ声をすかさず奪われ、感じた息苦しさに、背中へと爪を立ててしまう。
それでも、かさついた大きな掌は器用に動き回り、仕舞いには色付いた二つの突起へ辿り着いてしまった。当然の様にぎゅっと抓まれ、更に息が詰まる。
キツく爪を立てても、物ともしない頑健な肉体が憎らしい。
長い間ルフィの吐息を飲み込んでいたエースの口唇が、徐々に下へと下がって行き、指先でぐにぐにと弄んでいた突起を口内へ収め、今度は舌で以て弄び始める。
時折歯で優しく磨り潰され、只でさえふっくらと膨らんでいたそこが、熱を持って存在を主張し始めた。
熱心に突起を愛撫するエースの髪に手を差し込み、抵抗を試みるが、唾液に塗れた先端を舌で押し潰され、髪を乱すに止(とど)まってしまう。

「んっあっぁ、エー、ス…っ」

「ん?どうした?」

「そ、こで喋んなっァッ」


胸元に顔を埋めたまま、視線だけを寄越したエースの吐き出す吐息が、右側の突起をくすぐる。
冷えた感覚に身震いしながら抗議するも、エースは楽し気に笑っただけだった。
笑んだ拍子に洩れた吐息が、又しても突起を刺激し、堪らない愉悦を生む。
本当に云いたかった「止めろ」という一言すら云えず、只身悶えるしかない。
丸みも何も無い、ささやかな突起を可愛がる事が好きなエースは、ルフィが本心から厭がっていないのを良い事に、時間を掛けて丹念に舐めしゃぶるのが常だった。
そんなエースのお陰か、はたまた所為か。最近では、布越しに一撫でされただけで、下肢が敏感に反応するまでになってしまっていた。
無論、責任を取るつもりでちょっかいを掛けて来るのだろうが、朝方まで責め苛まれた肉体は、甘い遣り取りだけで精一杯。
若い肉体は、スタミナは有れど、深い交わりには不慣れで覚束無い。
ルフィの身を気遣い接してくれるエースではあったが、時折、箍(たが)が外れてしまったかの様に、無心に求めて来る事が有る。

それが、昨夜の交歓での事。
結果、陽が高く昇っても、シーツの波に包(くる)まれ溺れるまま。
気怠い身体を持て余し、だらだらと抱き合い現状に至る。
常であれば、自己管理を怠らず、弟の管理すらもこなす頼もしい兄が、時折仕掛けて来る悪戯。それを一種の甘えとして(無意識の内に)受け止めているルフィ。
だからこそ。今度は、勃ち上がり掛けた性器を捕らえられても、何も云わず、感じるままに声を上げただけだった。
反応を示す箇所を心得た、エースから与えられる確かな愛撫が、気持ち良くて堪らない。
もっと、触れて欲しいと思う。
もっともっと、奥深くまで。


「んーっん、は、あぁっ」

「ルフィ、」

「んんっ?な、んだ…?」




“好きだ”
突然手渡された言葉に、元より大きな瞳が、更に大きく見開かれる。
相変わらず胸元を彷徨うエースの顔を見遣れば、強く、けれど優しい視線とぶつかる。
視線も、突起をくじる舌も、下肢に触れる掌も。
何もかもが、熱い。
まるで、エースが纏う業炎の様だ。
何処までも熱を帯びて、ルフィの思考をどろどろに溶かそうとする。
視線を交わらせていると、内から焼かれている様な錯覚に陥った。
身体がどんなに悲鳴を上げていても、ルフィがエースを欲しがる気持ちに際限など無い。知るからこそ、エースは躊躇わずルフィに触れ、ルフィが欲しがる言葉を与えてくれるのだ。
甘やかす様に、甘える様に。時には、酷く強引に。

勿論、返す言葉は決まっている。胸には、たった一つしか無いのだから。




「ぁ…おれもっすきだ…っエース、ぅっもっとさわってくれ、よ…っ」

とろけた思考によって、ささやかなストッパーが弾け飛ぶ。
このまま、シーツの波に溺れ死んでも構わないと。
熱い視線に晒されながら、愛しい兄の頭を、強く強く、胸に抱き寄せた。















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相も変わらず拙い作品ではありますが、少しでも楽しんで頂けましたら、幸いにございます。

ちくびスト椿姫より、愛を込めて!







11/02/14
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