※Not海賊
※“愛玩の切先”甘々バージョンと云いますか、少し後の話となっております
※恐れ入りますが、オトコマエルフィたんがおすきな方は回れ右願います
















降伏の条件










特段、動物愛護の精神が強い訳ではなく。愛情深い性質でもない。

或る、一つの対象を除いては。





「ル〜フィ〜。なァに怒ってんだ?メシだぞメシ〜」


薄暗いベッドルームを覗き込み、こんもりと盛り上がった掛け布団に向かって声を掛ける。
ぴくりとあから様に反応した後、丸い山が動いた。もぞもぞと、普段とは真逆の緩慢な動作で。


「お」

掛け布団から、黒い頭が覗く。けれど、今この場所から一歩でも動いてしまうと、引っ込んでしまうのは目に見えていたから、代わりに、取って置きの言葉を掛けてやる事にする。
臍を曲げてしまった可愛いペットに対して、覿面に効果を発揮する、魔法の言葉を。


「今日は肉の日だぞ。肉はおれも好きだからなァ。早くしねェと無くなっちま」

「肉っ!!」

全てを云い終える前に、シャンクスの脇を小柄な影が駆け抜けて行く。
毎度同じ反応であるルフィの後を、笑いを堪えながら追い掛ければ、ダイニングキッチンに配してあるテーブルセットの椅子にちょこりと座し、涎を垂らし目を輝かせていた。
朝食は必ず二人で、と勝手に決まりを作った為、臍を曲げているにも拘らず、ルフィは律儀にシャンクスが戻って来るのを待っていた様だ。
偉いな、と頭を撫でてやると、気持ち良さそうに瞳が眇められる。
頬を覆う垂れた耳が、ぴくぴく震える様が愛らしい。
艶の有る黒髪と、極上の手触りである黒く長い耳。ほんの数時間前まで、散々手触りを楽しんでいたそれがゆらゆら揺れていると、熾火の様に燻っていた劣情が、同じリズムで甦る。
年甲斐も節操も無い自分自身に呆れる思いだが、抑制する気は毛頭無い。
そもそも、完全な人間とは云えないルフィを拾って帰る時点で、人間性が世間一般とはずれている事に違い無いのだから。
人道的には間違っていなくとも、人間心理的には大いに誤り有りだ。
細かい事に拘らず、面白いものに興味を惹かれ、面倒臭がりだが、面倒見が良い。
それが、シャンクスという男だった。
当初の目的は兎も角、今はなかなか上手くやっていると思う。
生来の素直さを惜しげも無く晒すルフィに、振り回されている感も否めないが。



「んんっシャンクス〜、メシ食いてェ!」

「そうだな。あ〜…イヤ、ちょっと待て」

「ええーっ腹減った!!肉肉肉ーっ!!」

「あァ、ちゃんと食わせてやっから。その前にほら、ちょっとこっち来い」

むずがる様に首を振られ、ようやっと手を離したシャンクスは、よっこいせとおっさん臭い掛け声と共に、ルフィの向かいへと腰掛ける。
当然の如く、「いやだっ」と要求を跳ね除け、外方を向くルフィ。
空腹と曲がった臍が、聞き分けを悪くしているらしい。
構う事無く無言で見つめ続けていれば、やがて、不満顔を不安顔へと変えたルフィが、おずおずとシャンクスの傍らへ立った。
尻尾を垂れた犬の様に、情けなく眉が垂れ下がっている。


「し、シャンクス…怒ったか?」


足元を見つめ、けれど気になるのか、上目遣いにシャンクスの表情を窺い見る。
ちいさな手が、ぶかぶかの裾をぎゅっと握り締めている。

(…っ)

予想と寸分違わぬ反応を見せてくれるルフィに、吹き出しそうになった。本当に、素直で可愛い奴だ。
普段であればもっと突き回してやる処だが、これ以上臍を曲げられても困る。
拗ねるルフィをあやすのも楽しみの一つだが、今はもっと別の事がしたい。
「怒ってねェさ」と声を掛けてやると、目に見えて肩の力が抜けた。

「わっシャンクス!?」

「よォし。メシ、食うか」

シャンクスの言葉に安堵し、所在無く立ったままだったルフィを膝へと抱き上げ、片手にフォークを手に握る。
嬉しそうにこくこくと大きく頷いたルフィの口元へ、柔らかく煮込んだ肉の塊を持って行ってやると、待ってましたとばかりに大口が開く。まるで、鳥の雛である。
フォークごと、がぶりと肉に噛み付いたルフィに目尻を下げながら、自身はワインボトルを手に取った。グラスを使わないのは何時もの事だ。
それから、スープを飲ませてやったり、サラダを食べさせてやったり(うさぎの癖に野菜嫌いで困る)、何くれと無く世話を焼いてやりながら、更にアルコールを呷る。
合間に肉を突(つつ)く程度で酒ばかりをかっ食らうが、アルコールに滅法強い為、酔う事はない。
食事する事が、異常に下手くそなルフィの食べ零しを片付ける為には、強か酔う訳には行かないのである。
まぁ、こうして手ずから食べさせてやっていれば、掃除する必要も無いのだが。


「なーシャンクス」

「ん〜?なんだ?」

「シャンクスも、ちゃんとメシ食わねェと駄目だぞ」

「あァ、ちゃんと食ってるぞ。おれにとっちゃ、コイツがメシだ」

こちらを振り返って心配そうな顔をするルフィに、笑いながら残り少ないボトルを掲げてやれば、眉を寄せた不機嫌顔が返って来た。
無意識に尖った口唇が、キスしてやりたくなる程愛らしい。
シャンクスは、苦笑しながらスモークされた肉を切り分け、ルフィの口元へと持って行く。
「まァ、食えよ」と、機嫌を取る様に口唇へ押し付ければ、眉を寄せたままで大きく口が開いた。肉を舌に乗せた途端、重力に従いだらんと眉が落ちる。
勿論これも、予想済みだ。


「美味いか?」

「んっふふぁい!」

「そりゃァ良かった。じゃ、おれも頂くとするか」

「?むぐっ、ん、んん〜〜!!」

強引に捕らえた顎をそのままに、ソースに濡れた口唇にがぶりと噛み付いてやった。
上がる悲鳴もなんのその。
狭い口内に差し込んだ舌を気儘に動かし、ルフィを翻弄する。
ごろごろと口内を行き来する肉を、奥歯で噛み潰し返してやると、溢れた唾液と共に飲み下す音がした。
きっと、肉の味など分からないだろう。


「はぁ…っ、は」

呼吸を荒くしながら凭れ掛かって来るルフィを胸で受け止め、晒された首筋に口付ける。
ぴくりと反応したルフィの身体を反転させ、逞しい肩に担ぎ上げた。
驚き、まだ食べ足りないと騒ぐルフィに一瞥もくれず、寝室へ逆戻りしたシャンクスは、昨夜(もう朝に近い)の余韻が残るベッドへと、静かにルフィを降ろす。



さぁ。食欲を満たしたその後は、お約束でお楽しみの。
半分が獣であるルフィと、獣の様な、即物的な欲望に浸食されたシャンクスに、似合いのデザートを。















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11/01/24
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