※若干の性的描写がございます。苦手な方はご注意下さい。
 エースがルフィたんのぱんつを嬉々として脱がせております。

















仔羊の誘惑










黒ひげ、マーシャル・D・ティーチを追って航海を続けるおれは、砂漠の国アラバスタでルフィと再会を果たしてからというもの、常に頭の何処かでルフィの事を考えていた。
考えていた、というより、無意識の内に意識がそっちへ向かっていたと云った方が正しい。
怪我はしていないか、食う事に困っていないか。
情報を集める為に立ち寄った島で、又懸賞金が上がった事を知ったが、誇りに思う反面、常に心配は付き纏う。
手を離しちまった時点で、あいつはあいつの道を突き進んで行く事は分かっていた。
だが、ままならない事も有る。
他の事に気を取られてる場合じゃねェのに、あいつの事が頭から離れない。

ルフィを、抱き締めたくて堪らない。





「エース?どうしたんだ?」




下から掛けられた声に、はっと我に返った。
抱き締めていた腕を解くと、首を傾げたルフィが視界に入る。
ヤベェ、つい願望を体現しちまってた。
横に倒れた、おれと揃いの黒髪を撫でると、ルフィはにっと嬉しそうに笑った。あァ、相変わらず可愛いな。


「いや、なんでもねェ。お前が怪我してねェか確認しただけだ」

「怪我?そんなもんしてねェぞ?」

「あぁ、分かってる。今確かめた。それより、仲間はどうしたんだ?」

「あ、そうだ!聞いてくれよエース!今おれ一人なんだ。皆買いもんとか探検に出ちまっててよー」

「お前一人か?」

「じゃんけん負けた」

こくりと頷いたルフィは、暇だ、と両手に持っていた焼き菓子を口に入れた。
膨らんだ頬が小動物みてェだ。
好奇心の塊を大人しくさせるにはコレが一番だと、仲間は理解しているらしい。
食うに困っていないという事は分かった。
同時に、この船のコックが、相当腕が良いだろう事も。
ルフィの満足そうな顔が、可愛くも小憎らしい。
こんな顔をさせる事が出来る人間も、こんな顔を見る事が出来る人間も。

―――――心底、憎い。



「エースはどうしたんだ?探してた奴、見付かったのか?」

「ん?…あぁ、まだ見付かってねェんだ。取り敢えず今は、情報収集するしかねェな」

「そっか。エースも大変なんだなー。今日もすぐ行くんか?」

「いや。今日はこの島で宿取ろうと思ってる。お前は?」

「ホントか!?おれも今日この島に泊まるんだ!良し!エースもおんなじトコに泊まろう!」

名案だと目を輝かせて云うルフィの言葉にそうだなと頷き、仲間が帰って来るのを待つ事にする。
宿が決まるまでじっとしていろと云われたと、ぶすくれるルフィ。
まぁ、お前が動き回れば、厄介事を引き寄せちまうのは予想がつく。正しい判断だ。
暇を持て余していたのは本当らしく、ルフィはたんまり用意されていた菓子を口へ押し込みつつ、良く喋った。
おれの話も聞きたがり、少し、仲間の話もしてやる。
そうこうしている内に、コックだという金髪の男と、ゴリラ(船医らしい)が戻って来た。
他の仲間とは宿で合流するらしく、食材を積んだ後目的の宿へ向かった。
丁度一部屋空きが有り、その部屋を借る事になったが、当然の様に、ルフィが押し掛けて来た。
二人部屋だったのが仇になったな。
…いや。おれにとっては、チャンス、か。


「ルフィ、先風呂入れ」

「んん?」

「それとも、一緒に入るか?兄ちゃんが洗ってやるぞ」

「ええー狭いじゃんか」

億劫そうにベッドから起き上がりながら、それでも風呂場へ向かった。
昔から、おれの云う事は良く聞く。ただし、他愛も無い事だけ。
頑として譲らない処も有るが、基本的には素直な奴だ。
それでも、やっぱりおれの思う通りにはならない。
そんなトコが良くも悪くもあって、なんとも云えねェが。

相変わらずちっせェ頃からの癖が直っていないのか、脱ぎ散らかされた服を手に取り、思わず顔を近付けた。
潮の匂いに混じって、微かにルフィの匂いがする。太陽の匂い。
この匂いを嗅いでいると、昔の事を思い出す。
必死になってオレの跡を追い掛けて来たルフィ。
おれの後ろにあった笑顔も泣き顔も、きっと何も変わっちゃいないんだろう。
何時の間にか変わっちまったのはおれだけで、ルフィは何も変わらない。
どろどろと渦巻く闇を抱えたおれには、眩し過ぎる。


「あー…すんません。…ルフィ、居るか?」


コンコン、と控え目なノックの音に顔を上げると、扉の外から男の声が聞こえて来た。
ルフィはまだ風呂場に居る。
持っていた服を全てベッドに乗せ、扉を開けると、金髪の男が立っていた。
ルフィんトコの…確か、コックだったか。


「すまん、今風呂入ってんだ。用が有るなら、伝えておこうか?」

「あ、いや…」

男は躊躇い、目を逸らす。
何か、云いにくい事でも有るのだろう。
さらりと流れた金髪が、鈍く光る。


「あれ?サンジじゃねェか。どうしたんだ?」

「ルフィ!ってお前、又裸で…っちゃんと服着て出て来いって何時も云ってんだろうが!」

「だって熱ィんだもんよ」

「そんな問題かボケ!」

「ルフィ、早く服着ろ」

おれを通り越して交わされる会話に苛立ち、半ばぶった切る形で割って入った。
頬に、痛い程の視線を感じる。この強さは、只見てるだけ、なんてモンじゃねェな。
おれの言葉に従って渋々服を着たルフィは、用意してあった水をがぶ飲みし、ベッドに腰掛けた。
コラ、脱いだ服の上に座んな。

「あ、そだ。サンジ、なんかあったのか?」

思い出した様に首を傾げたルフィに、「あー…忘れた。もう良い」と一言返し、男は踵を返した。
大方、部屋に戻って来いとでも云いたかったんだろう。
尋常じゃなく強い視線は、今でも頬を刺す。
宿へ向かう道すがらおれだけに見せた、昏い激情。
隠してるつもりだろうが、おれには分かった。
あの男も、ルフィに対して、同じ感情を抱いている。
「なんだったんだ?」と考え込むルフィを置いて、風呂場へ向かう。
冷たい水でも浴びて、苛立ちを鎮めた方が良さそうだった。











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