お前の傍で笑ってた。
なんにも知らないで、馬鹿みてェに笑ってた。
なぁ。なんで云ってくれなかったんだ?
云ってくれりゃ、こんな事にはならなかったってのに。











白濁する思考













深夜、皆が寝静まった時間を見計らって、ルフィを連れ出した。
寝汚いコイツは、抱えても揺らしても起きやしない。
音が反響するバスルームを選んだのは、わざとだった。
何時ぞや聞いた魅力的な嬌声を、最適な空間で聞いてみたかったからだ。
案の定、声は良く響いた。
「声、あいつに聞こえんじゃねェか?」と囁くと、必死に口唇を噛み締める姿もなかなかだった。
声、に反応したのか、“あいつ”に反応したのか。
気分が良くなる反面、破壊的なまでの憤りを覚える。
なぁ、そんなにあいつの事が好きか?
あいつの何処が好きなんだ?
おれよりあいつの方が好きなのか?

なぁ、ルフィ。どうしておれじゃ駄目なんだ。


ルフィの後腔をガツガツと乱暴に抉りながら、何度口に出しそうになった事か。
すんでの処で飲み込んだ言葉の代わりに、思いっ切り乳首を抓ってやったら、いっそうおれを締め付けてきやがった。
こんな処まで開発されてやがるのか。
始終眉間に皺寄せた野郎が、ちっちぇ乳首をせっせと弄くり回してる姿を思い浮かべると、笑いそうになる。
あいつ、ムッツリだったんだな。





「なぁ、ルフィ…?」

「ん!あっあっあ、ぃ…!」

「乳首、真っ赤になっちまったぞ。痛くねェの?」

「あ、あんっ、ふ、うっ」


ぎりぎりと真っ赤に尖った乳首を摘み上げれば、ルフィの背が浮き上がる。
浮かんだ肋骨が呼吸の度に上下して、大量の汗が肌を滑り落ちた。
良かったな、ここがバスルームで。
アァ、塩水に浸かってちゃ、シャワーで洗い流さなきゃならねェけどな。
薄く笑いながら、今度は屈んで舐めてやった。
ぬるりと滑る感覚が厭なのか、身体を捩って逃げようとする。
無理すんなって。そんな体力、残って無ェだろ?
それとも、おれにこうされるのがそんなに厭か。


「ぁ、サン…ジ、ヤメロ、よ…!」

「ヤだね。テメェも案外イイ思いしてるだろ?…ほら。ナカ、うねってやがる」

「う、そだ…っああ!」

生意気にも、云い返して来やがった仕置きとばかりに、掴んでいた足首をぐいと持ち上げ、最奥を突く。
ルフィの尻とおれの腰がぶつかって、殊更鈍い音を立てた。
バスタブに溜めた、濾過していない海水が、壁に押し戻される。
戻った海水が、ルフィの顔にばしゃりと掛かった。
げほげほと嘔吐(えづ)くルフィに容赦無く腰を打ち付け、痛い位の締め付けを味わう。
首を傾ければ、忙しない動きで長く短くなるおれのペニスが目に入った。
この赤黒いモノで、今ルフィを犯している。
どれだけ夢見た事か。
実際、ルフィを犯す夢を見て、何度も下着を汚した。
夢精するなんざ、ガキか、おれは。
我に返って溜め息を吐くも、すぐにトイレへ駆け込み、勃起したままだったペニスを慰めた。それも、何度も。
そんな煮詰まった状況を打破したのは、意外にもルフィ自身だ。

いや、ルフィと…ゾロ、だった。



丁度今と同じ様な深夜、トイレに行きたくなって目が覚めた。
それが運の尽きだ。
用を足し、一服しようと甲板に出たおれは、見張り台に目を向けた。
ほんの偶然、目を向けただけ。別に、何か意図が有った訳じゃない。
その日はルフィの当番じゃなかったし、興味も無かった。
目を向けた先、薄暗い三日月に照らされたそこにあったのは、二つの影。
重なり合ったそれは、一人の人間の様にも見えた。
でも、この船にそんな横幅の有る人間は乗っちゃいない。
強いて云えばヒト型になったチョッパーだろうが、起きて来る前、床に落ちている姿を見掛けた。
だから、チョッパーじゃない。
チョッパーじゃねェとしたら、アレは誰だ?

目は良い方だ。
薄暗いとはいえ、月明かりの有る中で、見間違える筈もない。





それは、うっとりと口付けを交わす、恋人達だった。

言葉にならねェとはこの事か。
あんぐりと、間抜けにも口を開けたまま、微動だに出来無かった。
なんだ?アレは。
ぽとりと、甲板の上に煙草が落ちた事で我に返り、足音を立てない様にして男部屋へ戻った。
バクバクと煩い心臓を押さえ、扉に背を預けたまま、ズルズルとその場にしゃがみ込む。
クソッ、なんだってんだ一体…!
あいつら、なんでキスなんか。




―――――あぁ、好き合ってんのか。
フザけてキスする様な奴らじゃねェのは、おれが良く知ってる。
ルフィは見た目も中身もお子ちゃまだし、あいつは、ゾロは、ガッチガチの堅物だ。
それに、人目を忍ぶ様に、重なり合っていた。

(なんだ、そうか…。なぁオイ、それならそうと云ってくれよ。おれの精子、死に損じゃねェか)

乾いた笑いが洩れる。
涙なんざ出やしない。
おれはそんな、繊細なタマじゃねェ。
只、そう。
ぐらぐらと煮え滾る憤りと、焼け付く様な痛みを感じる。
なぁ、ルフィ。どうしておれじゃ駄目なんだ。
なぁ、ルフィ。
なぁ……!



「く、ははっ」

「はぁっ、ぁ、サ…ジ?」

「…なぁ、ルフィ。折角だから、おれの精子受け取ってくれよ」

「あ…?っ、っ」

「アァでも、お前男だからガキ出来たりしねェよな。ガキ出来たりしねェのに、なんでこんな事やってんだろな…?」


だらだらと口から零れる言葉に任せ、ルフィの狭い穴を行ったり来たり。
健気に勃起したルフィのペニスからも、同じ様にだらだらと精液が流れ出る。
亀頭を撫でてやれば、ぴゅっと勢い良く白いモノが溢れ出た。
尻で簡単にイッちまう位、ゾロとセックスしてんのか、お前。
なんにも知らねェって顔して、とんでもねェ奴だよ。


「くぅ…っあぅぅっ」

「なァ、苦しかねェだろ?」

ドライでイケんなら、問題無ェ筈だ。
根元をキツく戒め、自らの快楽を追う。
もっとお前の中に居てェけど、そろそろ解放してやらなきゃ、可哀想だもんな。
おれは別に、お前を苦しめたい訳じゃない。
おれはお前を、只愛したいだけだ。


「あ、あ、あ、あっ」

「く…っ、ルフィ、ルフィ…!」

「ああっ、あんっあ」

片手で抱え上げた細い足が、宙を踊る。
腰まで跳ね上がった海水が、バチャバチャと音を立てて聴覚からおれを煽った。
肥大したペニスに、捲れ上がった粘膜が絡み付く。
聞こえる筈のない粘着質な音が、脳内に響いた。
顔を真っ赤にして喘ぐルフィは、苦痛と快楽の狭間を彷徨っている。
眉間に寄った皺が、馬鹿みてェに色っぽい。
開きっぱなしの口唇からは涎が垂れ、海水と混じる。
あぁ、勿体無ェな。
おれは、無意識の内にルフィの口唇に噛み付いた。ゆるゆると首を振り厭がったものの、抵抗は呆気無く終わる。
海水に力を奪われるたァ、能力者も厄介なモンだな。
普段のお前なら、おれなんかに押さえ込まれる事も無かったのに。
つらつらと思いながら、捻じ込んだ舌でルフィの舌を絡め取る。
舌の裏をざらざらとした表面でなぞり、縮こまりそうになっていた舌を緩く噛む。
咽喉声を鳴らして厭がるのを、口蓋を舐めてやる事で宥めて、溢れそうになる唾液を啜った。
甘い筈もないのに、極上の甘露だと感じるおれの味覚は、狂っちまったのかもしれない。
一流のコックが、愚かな恋の奴隷になり下がったってのか。



「やっ、ゆびっゆび、はずし、ぅっくれ、よぉ…っ」

口唇を離した途端、息を弾ませたまま懇願して来る。
根元を戒めていた右手に、弱々しく爪を立てられた。
仔猫みてェだな、と場違いな事を思う。
ルフィが仔猫なら、ずっと可愛がって、おれだけのものにしちまえるのに。
耳元に口唇を寄せ、べろりと耳朶を舐め上げた。ちくしょう、クソしょっぺェんだよ。


「く、ぁ、ぅぅ」

「…んっ、イキてェ…?」

こくこくと必死に頷く姿に愛しさを感じるおれは、本当に終わってる。
戒めていた指を解くと、射精を促す様にペニスを擦り上げてやった。
その間も、だらだらと少量の精液が零れ続けている。
直接的な刺激の所為で、締め付けを増した後腔は、絶妙な緩急で以ておれを攻める。
おれも、すぐにイッちまいそうだ。
腸壁に先端を擦り付け、溢れる先走りを塗りたくる。
マーキングみてェに、しつこく。
おれ以外の誰にも、侵入を許さないという様に、何度も何度も。



「ああーっあっあ、ぁ…」

「…っ、っ」



勢い良く飛び出した精液が、ルフィの顎を汚す。
連動した内部の痙攣に促され、射精寸前のペニスを引き抜いた。
ルフィの腹に擦(こす)り付けながら数度扱くと、精液が口元にまで飛んだ。
ルフィの赤い口唇と白のコントラストが、やけに卑猥だ。


(おれが、どんなにお前を汚しても、どうせあいつが綺麗にしちまうんだろうな)


このまま、おれの思いもぶちまけてやりたい。
精液の散った腹を見つめ、ぐっと口唇を噛み締める。
ゆらゆら揺れる海水が、波の様にそれを浚って、完全な無に帰した。















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書きやすくて堪らない不憫サンジ。
その内、幸せなサンジを書いてみたいと夢見ています。

閲覧して下さり、誠に有難うございました!







10/09/29
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