女性Dの証言



「ええ、そうです。あの日、お店に残っていたのは私とC男さんとA子でした。店長は 早く帰られていて時間帯責任者は年長で一番長く働かれているC男さんでした。C男さんはお客さんにドリンクを出していて、私たちは店の後片付けをしていました。
後片付けをしているとき、A子の様子がおかしいことに気がつきました。なにかに怯えているような…少しの物音でも大げさなくらいびくびくしてるんです。私はバイトの先輩としてA子と少なからず話をする仲だったので、どうしたのか訊いたんです。すると彼女は『もしかしたら彼氏が来るかもしれない。雨だから迎えに来るかも』って言うんですね。
なぜそれで怯えるかって?彼女、一つ年上…だから私と同じ年ですね、その彼から暴力を受けていたんですよ。名前ですか?確かB男…だったかな。まあ暴力といっても少し頬叩いたりとかその程度だと思います。
彼女、被害妄想癖っていうんですか、大したことじゃないのに大げさにする癖があったんですよ。それでよくC男さんに相談なんかしていました。彼も正直迷惑だったと思いますよ。彼は優しいので彼女のことを責めたりしませんでしたけどね。
ほら、被害妄想の人ってすぐ曲解するから…難癖つけられて誰も悪者にされたくないですもん。そんな鬱陶しい後輩の面倒もみてあげるんだから、C男さんは本当、優しくて後輩思いの尊敬できる先輩ですよ。
その後ですか?…ええっと、彼女が言ってた通り彼女が称するDV彼氏が迎えに来て…普通に帰ればいいのになにか揉めてましたね。彼氏が彼女を叩いたんですよ、それで体の弱い彼女は倒れました。
で、彼氏の方はC男さんが警察を呼んで、A子は私が車で病院まで連れて行くことになりました。病院に行くほどの怪我には思えませんでしたが、車で来ていたのが彼女だけだったのでキーを借りて私が運転しました。…え?ああ、C男さんは免許を持っていなくて。
…いえ、でも私は病院までは連れて行ってないんです。店を出て少し走ったところでA子がここでいいから停めてって。病院へは自分で行けるからって。でもあの日はひどい雨だったでしょう?危ないから送るわよって言ったんですけど、いいから降ろしてって聞かなくて。しょうがないから途中で車を停めたんです。悪いけれど車はお店の駐車場に戻しておいて欲しいって言われました。私は自転車でバイト先に出勤してるのでどちらにしろ一度戻るつもりでしたけど。
場所ですか?ええと、店を出て北に進んだところの大きい交差点の手前あたりですかね。そうです、少し下ったところに川が流れている。
…ええ、少しだけ様子を見てました。本当に大丈夫なのかって少し心配だったので。彼女大雨で増水する川の中に何かを投げ込んで、その後は川沿いに早足で去っていきました。いいえ、しっかりした足取りでしたよ。私は彼女を見届けてからバイト先へ戻りました」



青年Bの証拠

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