私と彼女は幼い頃から共に時間を共有していた。彼女は私が行くとこ行くとこに後ろから着いてくる。私の言葉をいち早く理解し、自分にできることはないかと模索している。私が傷つけば何も言わずにただ寄り添っていてくれる。私たちは良き友人であり、良きパートナーだった。

しかしあるとき私は、私を信頼しきったように甘えてくるその様子に、ほんの少しの不快感を覚えるようになった。

こんなに無防備で近寄って私に酷いことされるかもって思わないの?

苛立っていたのは、ここまで信頼寄せてもらうようなできた人間ではない自分へのふがいなさ。彼女の、私を、私だけを信じているその姿勢になんだか無性に腹が立ち、やるせない気持ちになった。やがてその私の一方的な苛立ちは憎悪へと変わり、徐々に表面化していくことになる。

私が帰宅すると彼女がおかえり、と嬉しそうに駆け寄ってくる。私が無視をすると、どうしたの?何か嫌なことでもあった?と心配そうな目で顔を覗き込んでくる。

彼女はいつだって私のことを考えて、私だけに優しくて、私だけを頼る。彼女には私しかいないからだ。気がつけば、私の頭の中の張り詰めていた細い糸がプツンと小さな音を立てて、切れてしまった。彼女のその細い首を両手で絞める。彼女は訳もわからずにただ無抵抗に私を見ている。ああ、なんて無力。なんと脆弱。

私は彼女のことがあんなにも好きだったのに。彼女は何も悪くない、すべて私の心の弱さが招いた結果だった。彼女には私しかいないけれど、私もまた自分には彼女しかいなかったのだ。そんなことを今になって気付くなんて。

私の眼は、小さな子犬が自分の手の中で確かに弱っていく様を虚ろに映しながら、とめどなく涙を零していた。




















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