「最後に自分を助けてくれるのは親だ、学校の先生でも友達でもない。所詮は他人なのだから」

昔、親に言われた言葉は洗脳的に頭に残っている。それはきっと真実なのだろう。それはきっと本心なのだろう。でもお母さん、それは本当に私の為なの?

いつだって私の母は私を愛してはいるが、私という人間を信用してはいないんだ。それはもう紛れもない事実で、原因は全て私にある。

わかっていても、それでも、「私」を見てくれないことが、時折無性に悲しくなってしょうがない。「私」を見て「私」を認めて「私」を受け入れて欲しい。こんな駄目な娘が自分の子どもだって理解して欲しい。自分達の娘が失敗作だったって認めて欲しい。私は失敗作でもいい、お母さんに愛してもらえるならそれでいいの。でもきっとそれじゃ、あなたには意味がない。

99%の私を全力で愛してくれるあなたは残り1%の私の存在を全力で否定する。たったの1%でもそれは私なの。間違いなくあなたの子どもなの。お願い、1%の私を許してよ、


山道を走っているせいで、車体がガタガタと不安定に揺れる。ここはどこなのだろう…見たこともない場所だ。

「もう耐えられない。あんたを育てることができない。お母さん、あなたに消えて欲しいの」

珍しくドライブしようなんて言い出すからおかしいと思ったんだ。後部座席のソファーに踞りながら、心の中で溜め息をついた。

バックミラー越しの彼女の真っ赤に充血した目は真っ直ぐに私を睨んでいた。その視線を横へ流すように車窓の外へ顔を向けた。

「…なんとか言いなさい」

私は黙ってちらりと彼女を見た。わかっているくせに何故わざわざそのような言葉を口にするのか。

「…何か喋りなさいよ!あなたは本当は話せるのに私を困らせる為にわざと口を閉ざしているんだわ!」

彼女のハンドルを持つ手は力の入れすぎで青白く血管が浮いている。私は再び車窓の外の流れる木々を眺めた。

私は声を発しない。発することができない。四歳辺りまで私に異常は見られなかったが、ある時急に言葉を口にできなくなった。

話そうとすると喉の奥で空気のだまが気道をふさいで息がつまり、呼吸が困難になる。医者からは吃音症という言語障害の一種だと診断された。おそらく心因性だろうとも。

『どうしてなの!こんなに必死に子育てしてるのに!どうしてなのよ!』

母は私を身籠ってすぐ男に捨てられ、一人で生んで一人で育ててきた。プライドの高い母にとって『男に捨てられた挙げ句生んだ子は障害児の可哀想な母親』という目を周りから向けられるのは多大なストレスだった。そのストレスは凶器となり、矛先は自然私に向かう。 母は泣き叫んで私に暴力を振るうようになった。初めは訳がわからず抵抗していたが、一日一回殴れば気が済むらしいということがわかったので、10歳になった今ではされるがままだ。

物心付いた頃から殴られてきたのでこれが"母親"なのだと思っていたが、最近テレビ幼児虐待防止のCMを見て、うちの母が異常だと言うことを知った。だがどうしようもない。例え母が異常であろうと、その子どもである私は彼女の元で生きるしかない。

「あなたはこれから死ぬの。私を恨むなら恨みなさい。私もあなたを許さないわ」

車を止めた母は私の首に手をかけた。気管をぐぐぐっと強く圧迫され息ができない。お母さん、お母さん、私は、私は…恨んでなんかない、例え殺されても、私は、お母さん、を、






1%の懺悔




















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