現代人はもはや神を必要としなくなったのかというとそうではないだろう。重病人を抱えた家族は医者にすべてを委ねた後で「神に祈る」。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉は人にできることを尽くした後は神に縋るしかないということを示している。その心情は今も昔も変わらないと言えるだろう。科学の最先端技術を誇るアメリカ合衆国大統領でさえ、テロとの戦いの宣言を「神のご加護があらんことを」という言葉で締めくくった。
近代以降、諸科学が飛躍的に発展したからといって、それは自然の摂理のほんの一部分が仄かに見えたにすぎない。私たちが獲得した「人間の領域」は「神の領域」に比べれば微小なものでしかない。
ならば今後は科学の進展に比例して神の領域が縮小していくかというと疑問である。社会が高度化し複雑化すればするほど、人は自然な状態から遠ざか







刹那、彼の訪問を告げる鐘が私の住まいに鳴り響く。電話を切ってからのあまりの早さに驚きが20%、久し振りに会える嬉しさ50%、一刻も早く仕事道具を隠さなくてはという焦りが30%で私は俊敏な動きでパソコンの電源を落とし、急いでベッドに潜り込み、眠っているフリをする。ガチャンとリビングのドアが空く音がしたのは殆ど同時だった。

「具合、どうや?」

いかにも彼の声掛けでたった今目を覚ましたという素振りで頭痛が酷いと答えた。それらしく咳払いまでしてみる。彼は私の額に手を当てて、熱いなあ…と唸ってから買い物袋から冷えピタシートを取り出した。

「食欲あるか?」
「ううん、今は要らない」
「とろける濃厚クリームプリン買うてきた」
「…やっぱり要る」

く、口の中でとろけよるでぇ!これは味の革命やあ!小さな甘いロマンスを味わせてくれる愛しい君をゆっくり丁寧に食べる。

「…仕事してたん?」
「なな・何故そう思うんだい?」
「パソコンの電源ついとる」

本体の方は確かに電源を落としたが、画面の方を消し忘れていたらしい。…こんなところに落とし穴があるとは、…無念なり。

「あかんやろ!風邪ひいてんねんからおとなしいしとかな」
「申し訳ございません」

面目ない。
私は駆け出しのライターで、今月は宗教をテーマに原稿を書けと言われていたので、締め切りが明後日に迫ったそれを頭をうんうん言わせながら書いていたのだ。宗教と現代人の関係なんて慣れない言葉に頭痛が更に酷くなった。

「兎に角、もう寝ときや」
「え、もう帰るの?」
「明日、早いから」
「…っ、待っ」

会話をしながら席を立つ彼を思わず引き留めた。なんだかつれないじゃないか。一週間ぶりに会ったというのに。彼女が風邪をひいて苦しんでいるというのに。もう少し一緒にいてくれたって良いじゃないか。きっとこれが病気になると人肌が恋しくなるというやつなのだろう。それに、彼が居てくれるだけで心が安らいで体が少し楽になる。

「ん、何や?」

なんて、そんな恥ずかしい言葉は絶対に言えない。から、

「晩ご飯食べて行きなよ」
「…俺が作るんか?」

神という存在を信じてはいないけれど、もし神様がいるなら。あまり良い人生じゃなかったけど、私、変わり始めてるのかもしれません。彼というどんな病気も治してくれる万能薬をくれて、ちょっぴり感謝しています。

















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