45//ヲトメ、恋せよ。



「僕とラクスは、恋人ではないよ」

女の子らしい興味津々な追求を、キラはと綺麗に笑ってかわした。



質問を投げ掛けたルナマリアの横で、シンはお茶を噴出した格好で固まっていた。
三人だけの小さなお茶会に華咲いた話題にしては、少しだけ過ぎた内容だったかもしれない。…と、後に二人は思ったものだ。
それはさておき。

「え〜?そうなんですか?嘘でしょう!」
「ルナ!それ以上突っ込むなよ!!」

地雷を踏むのは彼女でも、その爆発の集中砲火を受けるのは後を通る自分みたいでシンは必死だ。だが、女の興味と追及は留まる所を知らない。

「本当だよ」

穏やかな雰囲気を崩すことなくキラは頷く。
そこに嘘偽りはない。寂しさも無い。

「でも…、そんなの信じられないですよ」
「…なんていうかね」

前置きをするようにキラは一口紅茶を飲み、カップをソーサーに戻した。


「恋人っていう枠じゃない…って感じかな」


そう、何処かあの歌姫と似た微笑みでもって語った。





仕事だからとキラが去った後。


「何か、俺にはさっぱりだった…」

疲れた…と、シンは机にべったりへばり付く。話題の内容もさることながら、あの口調とか言葉とか。ホント不思議な空気の人だ。無駄だと分かりつつ、「う〜ん」と考え込んでみる。…すぐに断念する羽目になるのだが。

「私は何となく分かるような気がするわ」

曖昧な肯定に、シンは我に返ったように顔を上げた。
幼馴染みは少しだけ真剣な表情になって、カップの中の琥珀色を見詰めている。

「どういうことだよ」
「女と男じゃ、考え方も違うってことよ」
「よく分かんないって」
「シンは鈍いもんねぇ」
「どういう意味だよ!」
「ヤマト隊長には、ちゃーんと分かってるみたいよ」
「んなこと…」
「まだ分かんないの?」

ヤレヤレと不詳の弟を宥める仕草で、ルナマリアは横目で一瞥。

「…だから、ヤマト隊長はラクス様と恋人じゃないって言ったのね」

一人だけ解答を貰ったみたいにさっぱりした顔をしていることが、何となく悔しい。

「何でルナには分かるんだよ」
「私だから分かるのよ。…あ、きっとメイリンにも分かるかな。もしかしたら、艦長にも」

やっぱり、男と女の違いじゃないか。なら、自分には一生分からないってことか?
むぅ…と不貞腐れ気味のシンを見て、ルナマリアはやれやれと首を振る。

「望むものの差…ってことかな。私達がヤマト隊長に抱いてることと、ラクス様が隊長に対して思ってることの違いみたいな」
「はぁ?…だって、ルナだってキラさんに憧れてるじゃないか」

望んでることなんて、俺と同じじゃないか。同じ目線なのに、どうして自分には分からないのだ。

「女は憧れを色んな人に抱くもんだけど、恋の意味での好きとはまた別物なのよ」

もうちょっと、女心を勉強しなさい!
びしっと指を突き付けられて、シンは口篭ってしまった。

「あ〜あ。ラクス様は幸せものだなぁ〜」

羨ましー。

それは認めるけど…とシンは片隅で思った。
なのに自分が真に知りたいその部分はてんで理解できない。唸っても、答えは出てこない。


「女心は複雑怪奇。広くも狭くもなるものよ」


すました顔で流された言葉。
けれどやっぱり分かりようもなく、難解なクロスワードに嵌まった感覚でシンは悩み続ける羽目になるのだった。



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