44//忘れていいから覚えないで
宇宙の片隅に浮かんで、いつかは人の記憶から忘れられていくような、そんな星であればいいと思った。
そんな、悪夢の眠る場所でいいと思っていた。
……その名も、また。
それが叶ったのか、その真実を知るものは自分と、上司と、…この世界と己を憎んだその人だけだった。偶然か必然か分からない、遺伝子の連鎖で繋がった三人だけ。
それでいいと…それが救いだと思っていた。
それなのに。
『人類最高のコーディネイター』
『メンデルの申し子』
『進化の究極の成功例』
『至上の最高傑作』
多くの暗い賛辞に囲まれた真実を、何故最も知られたくは無い人間に覚えられなければならないのだろう。
それは何よりの苦痛だ。
影の真実なんて、表に出せば静かで平穏に生きられないからこそ隠蔽される。
望むものから掛け離れていく現実に過ぎない。
大嫌いだ。
誇りになどなりはしない。
力を得られたことに感謝はすれど、そのわけの分からない哀しい代名詞を、二度と僕の前に晒すなと思う。
人に多くのことを望まれて生まれた偶像の意味は、貴方が誰よりも分かっている筈だろうに。
僕という人間はここにいる。
ただ一人だ。
仲間に、親友に、家族に、大切な人たちに。
呼ばれる名前はたった一つしかない。
僕の名前は、キラ・ヤマトだ―――――…。