43//濾過されたもの



一つの視線は一つの合図。


一つの瞬きは一つの思案。


一つの細めは一つの訴え。


一つの注視は一つの観察。


一つの瞑目は一つの覚悟。


一つの正視は一つの傍観。




一人の瞳は一人へ繋ぐ。







「貴方達は、まるで目で会話をしているようです」

「え…?」

「目でもって、何かを示している」

「そう見える?」

「はい」

「そうか…。そんなにも露骨だったかな…」

「あの人に対して、逸らさず静かに目線を合わせていられる人間なんて、そうそういませんから」

「……そうなのかもね。視線は、言葉の次に人の心を読み取るもの」

「………」

「君は、何かを感じ取ったということ?」

「…いえ」

「でも…。…そんなに分かり易かったら、他人に心を読まれてしまうね。失格だ」

「誰彼と分かるほど、はっきりとしたものではないですが」

「いや。…君はそう思う?アイコンタクトしてたって」

「普段はギリギリの会話をしているくせに、目だけは顕著でした」

「うーん…」

「理由でもあるんですか。言葉にした方が、確実に伝わって早いというのに」

「………言葉に出すと、汚いからね」

「そうですか?」

「そう。てめーふざけんじゃねー飛び蹴りかましてやろうかその後頭部に」

「………」

「なんて心の言葉、聞きたい?」

「………。……結構です」

「でも、…困ったな。今度から、君には仕事から外れて貰おうかな」

「何故」

「読唇術みたいに、分かる人にだけ込めたメッセージ。でも、僕が意思を送りたいのは一人だけ。汲み取れと訴えたい相手も一人だけ。それが他の人にまで分かってしまったら、意味がないだろう?」

「………」

「それに恥ずかしいじゃない。何を好き好んであの人に熱い視線を送らなきゃならないの。はっきり言って、それは不本意。大いに不本意。腹が立つ」

「…だったら」

「だからね」

「………、……はい」

「人の視線の意味なんて、気付かないままでいて。互いにしか分からないものもある。…それが、僕のぎりぎりの限界なんだ」

「……よく」

「分からなくていいよ。…今はまだ」

「………」





「伝えたいことは全て、いつの間にか視線に代わっているだけだ…」







TITLE46






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