39//螺旋階段の終わり





聞いたことがある。

彼はいつも、屋外の何処か高い場所にいることが多いから。
ある者は「らしい」と云い、ある者は「変わりモノ」と云う。

探す方は苦労しますよ。走り回る羽目になる。と眉を寄せていた人間も。
思わず笑ってしまったが、「君はいつも自分から探しにいくんだな」と告げると、何とも奇妙に顔を歪めて沈黙してしまった。


思い出しながら、その言葉を頼りにしながら、彼の人を探していた。



特に重要とする目的は無いが、気分転換もかねて歩き回る。

「気を抜く時間もないなんて大変ですね」と、気遣いなのか皮肉なのか分からない言葉を貰ったことがある。
彼の態度の軟化は既に諦めていたし、求めるつもりもなかった。


その距離こそ、が。

相応しいもので、一番楽な見せ合いだ。










………見付けた。



螺旋状階段の頂上。

手摺に肘を乗せて空の中にいる。



「………」



どうしてそんな処にいるのか。
何を見ているのか。
問いたい気持ちは多くあれど、思わず足を止めて静視したくなった理由はもう一つ。


螺旋階段の入り口で止まる己と。
昇った先の最後に留まる彼と。
違うものは何なのか。


今、自分がいる階段の始まり。
そして彼が今いる、階段の終わり。



「……ふ…」


思わず忍び嘲う。


ああ、何と正しい姿か。
納得してしまう。



…風が、吹いた。


長い黒の髪が流れた。

見上げて眩しい太陽の光に手を翳した。




彼が…―――――…こちらへと振り向いた。


気付いて視線を下ろした。






絡む。……結ぶ。







まだ、螺旋は―――――繋がっている。










TITLE46






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