37//赦しなんていらない





闘いの終結の後、俺は無事に役目を終えた。

そして……、帰ってきた。


闘う決意をした瞬間の故郷ではなく、戦うことを望んだ同胞の星へと。


勝敗は……再び、いつかは繰り返しの戦禍へと逆戻りになるかもしれない。
そんな、どちらにとっても得られるもののない、ただ失うだけの終局となった。

それでも俺は帰ってきた。

生きて。
疲労と、病む精神にボロボロになりながらも。


…―――俺は、約束を守った。


……なのに。


帰り付いた地に、約束の人はいなかった。


『必ず帰れ』と告げたあの人は、俺達の前から姿を消した。
いつも、あの人の傍らに寄り添い、共に世界を見詰めていた彼女もまた。

失ったものは多かった。
仲間も命も。
己の中で不変だと思っていた意志も。

打ちのめされたことも、泣くほどの慟哭もあったのに、それでも帰らなければと思ったのは。

ひとつの…約束があったから。


「必ずここに帰れ」―――と。


…言ったのに。
それを信じたのに。どうして。



…ああ。

最後にもう一言、付け加えたのだったか。


『次の出会いを、いつか待っているよ』


ここに、帰って来いと言った。
けれども次の邂逅は、待っていると告げた。

なんという愚かな勘違い。

裏切られた?…―――違う。

何で俺はそう思うのだろう。
何故こんなにも立ち尽くしているのだろう。
自分がしてきた戦争に罪を窺うよりも、かけて欲しい言葉でも…見せて欲しい笑顔でもあったというのか。


『待っている』と言ったのに。

だから、帰ってきたのに。
なのに。
なのに?………なんで。


『いつか待っているよ』


シンは、顔を上げた。


やっぱり、あの人の言葉に嘘は無い。
嘘でなくせばいい。

許しなんてなくていい。
許可なんか要らない。

赦し………なんて。

誰に。
一体誰が。

何を。



『待って……いるよ……』



そして俺は、もう一度。

この、懐かしい残影の海に立つ。



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