33//無力な腕を嘆きましょう





「何かアスランの秘密握ってませんか!?」
「どうしたの。突然」

寛ぎモードだったキラの前、バン!と机を叩いてシンは詰め寄った。

先日の一件から。
今度は対象をキラからアスランに移し、それを問う相手をアスランからキラに移し、今度もレイを道連れにやって来たというわけだ。
正確なところ、キラにマンツーマンで対峙するのは何となく、心臓に悪いというのが本音らしい。
分からないでもないので、溜め息一つでレイも付いてきている。


「何でもいいんです!アスランの重要な情報とか!」
「うーん?」

唐突なことに気を悪くした風もなく、キラは考え込んだ。

「そうだねぇ…、アスランの趣味は機械いじりで、暇さえあれば小型ロボットを昔から作ってたなぁ。好きな食べ物は…うーん、何だったか。特別好きなものは無いみたいだけど、結構偏食家なんだよ。食わず嫌い。お坊ちゃまだよねぇ。我侭なところがあって、たまに殴り倒したくなる。そもそも僕の周りは家系からしてエリートが多過ぎて、ハイソサエティが多過ぎて、育ちブルジョワが多過ぎるんだよ。贅沢は敵って教えてくれる人は他にいなかったのかな。あとは」
「もういいです…」

シンは項垂れた。

「え、そう?」

そうしてやっぱり、今度もレイが引き取った。

「シンが知りたいと言ったのはアスランの弱味であって、お見合い情報が欲しいわけじゃありません」
「へぇ、レイもお見合いって言葉を知ってるんだね。何だか新鮮だなぁ」
「………」
「お見合いっていうよりも、今は遺伝子補完の婚約かな。あの時のアスランとラクス、ホント大変だったし」
「ヤマト隊長…」
「あはは。冗談冗談。…シンは、アスランを追い抜きたいんだね」

途端、柔らかな年上の目になる。
それに虚を突かれながらも、その言に複雑な心境を味わう2人。

2人が…シンが本当に越えたいと思うのは、目の前で優しく微笑むこの人なのだ。
自他共に認めるキラの親友に追い付くことが、まずは始まり。

他人に弱味を聞くこと自体が、既に一歩劣っているということにレイは気付いているものの、思えば一直線のシンに仕方なく付き合ってたりするのだが。


「でもな、僕が知ってるのはアスランの弱味って言うよりも恥って感じだし」
「それが知りたいんです!」

ガバッと飛び付いたのはシン。
まさに、…まさにまさに!彼が一番知りたい待ち望んだ情報だ。恥=弱味だ。

「ダ・メ」
「何で!」
「フィフティーじゃない。…ま、僕がアスランをからかうネタにする時にでも、本人の前で暴露してあげるよ」

余計に性質が悪くないかと思ったり。


「まぁ、弱味になるかどうかは分からないけど…、そうだね。アスランの部屋にある工具類一式を隠しでもすれば、動揺ぐらいは見られるんじゃない?」



まー、頑張って。

















「あれ。レイだけ?シンは?」
「貴方の意見に素直に従った結果、アスランに悪鬼の如く艦内を追い掛け回されていました」






TITLE46






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