「…で。ホントお前なんなの?」

ボロ…と疲労を負いながらディアッカは仕切り直した。何で俺だけがこんなに疲れ切った姿になってんだ。

「だから天使だってば」
「貴様…っ」
「あー!もう頼むから大人しくしててくれよ!イザークもお前も!」
「てかお前とか貴様とか止めてくれる?僕の名前はキラだって言ったでしょ」
「そのふてぶてしい態度はなんだ!!貴様は紛れもなく不審者だろうが!」
「だからー、清廉潔白な天使だって言ってるだろ」

完全に開き直った態度で、その侵入者…キラはそればかりを主張する。うっさい、とふてくされる仕草は完全に喧嘩腰だ。イザークが怒髪天を突くまで時間の問題だろう。

「ああもう分かった!天使でもなんでもいいから!…でお前の目的は…!?」
「光集め」
「なんだそれ。軍機密を示す隠語かなんかか?」
「機密?それコンピューターデータのこと?」
「まぁ…そうとも言うけど」
「それなら興味があるよ。ぜひ見てみたい。ここを覗いたのもそれが目的の一つだし」
「やはりスパイか!ザフトとプラントに害を成すなら許さんぞ!」

ふりだしだ。とうとう我慢出来なくなったイザークが、胸ぐらを掴まん勢いで詰め寄った。
キラは「あーもーウルサイ」と耳を塞ぐ。

「何を勘違いしてるのか知らないけど!僕は別に君らの行く末なんか興味は無いよ!」

僅かに驚いた目付きになる二人に、キラは憮然と言った。

「興味が無いって…どういう意味だよ?」
「そのまんまだよ。人間の作り出す技術にはそそられるものがあるけど、それによって起こる君らの未来には興味は無い。どーでもイイ」

幼い顔付きからは想像の付かない排他的な台詞だった。

「滅ぶも栄えるも、その種族のそれまで歩いてきた結果だ。僕らが干渉する理由もなければ、それにどうこう感じることもない」
「……お前…」
「キ、ラ!」

語る中味はとてつもなく冷めた人生観なのに、自分の名前はちゃんと呼べと子供のように主張する。

「まるで自分が人間じゃないみたいな台詞を吐くんだな」
「だから、そうだって」

何回言わせるの。不機嫌そうに眉を寄せて、同じところへループする。

「……マジで…天使だって…?」
「そうだよ」
「………、……そんで、人間なんかどうでもいいって?」

話が繋がらなくて頭が痛くなりそうだ。
ちらとイザークを見たら、ディアッカ以上に眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。

「…って、教育されてきたし思ってたんだけどさ…」

キラもまた複雑な表情をして溜め息を付いた。

「最近は、君らが笑ってるのを見るのが好きになって来たんだよね」

こういうのを、ほだされたっていうのかな。

「だから、ここにいるんだし」
「どーいうこと?」
「僕の役目は光を集めること。それで、ここにもその片鱗が見えたんだよね」

遠くから眺めていたら、ここに欲しい光の欠片が見えたのだという。

「………」
「………」

相変わらず理解不能な言葉の数々で、ディアッカはイザークと顔を見合わせる。

「ここ…っていうか、君らからなんだろうな。見えた光の源は」

『光』…?
さっきから繰り返し口に上る単語だ。

照明は自分達の周りにしか当たっていない。
広い格納庫の室内には、操作パネルやそれを映し出すディスプレイが淡く発光しているだけ。
光源になるIDや通信機器など、携帯していただろうか。思わず胸元を押さえてしまった。

そんな疑問符を浮かべるディアッカ達など目にもくれず、キラは淡々と呟き続ける。

「でも君ら、なんか義務や責任ばっかり果たそうとしてて、ちっとも楽しそうじゃないよね」

それじゃあ意味がない。…何が?
こちらが口を挟む余地もなく、キラは一方的に自己完結してしまった。

「だから、決めた!君らの作業を僕も手伝う!そんで早くここから君らを帰す!!」
「は?」
「何を言っている…」
「これでも大分、人間の技術は身に付いたんだよ?…任せて!!」

何処までもマイペースな紫の眼の天使とやらは、どーんとこーい!と…むしろ作業を手伝いたい、機械をいじりたい、と言わんばかりの積極さで目を輝かせた。







 








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