もっと二人と交流出来るところに行こう?


唯我独尊、ある意味で自由過ぎる行動力を持つキラは、そう言って「遊べる場所はないの?」と首を傾げた。

そうしてやって来たのは…。



「え。何コレ。なんでジャンプしないの?なんで敵につっこんでくのー?」
「そこのボタンじゃないって!キーも逆!」
「そんないっぺんに言われたって分かんないから!」
「コントローラー持ち上げんな!これにリンク機能はない!!」


宿舎…―――…シンの部屋である。


わあわあと地べたで騒ぐ二人の後ろで、レイだけが窓辺の椅子に座り雑誌をめくっていた。
当然、最初に去ろうとしたら、キラが笑顔の圧力を掛けてきたのだ。加えて、

「金髪くん。君の名前は?」
「………、……レイです」
「OK、レイ。君も一緒に来るよね?」

…大きな溜め息を付くしかなかった。

今はひたすら無言で、シンの部屋に備え付けてあったゲームに夢中になる二人を、時折見遣るだけである。



ぜーぜー言いながら、二人は既に何回目になるゲームオーバーの画面を見詰めた。

「…あんた、向かないんじゃないの?」
「慣れてないだけだもん」

もう数時間はやってる筈だ。

「いや、諦めろよ」
「僕は天使だからなんでもできる」
「…わけわからん」

おとぎ話通りの神様なら万能かもしれないが、その遣いである天使も同じく万能なのかよ?
神とやらを、部下をこき使うやっかいな上司としか認識していないリーマン天使のくせに…。
『万能』の使いどころが大いに情けない。

「天使をナメるなよ。今にベテランの域に…」

ツッコミどころが満載過ぎて、最早突っ込むのも疲れる。

「つか、天使天使うるさいよ。それ連呼してて恥ずかしくないのか?」
「だって本当のことだし」
「なら証拠に羽でも出してみろっつーの」

途端、キラは呆れた目をした。

「人に説明するたびに、その質問ばっか。天使イコール羽根とか翼とか…安直過ぎない?」

人間って、皆そうなんだよなぁ。キラは呟く。

普通、天使って言ったら想像するのは羽根付きエンジェルだ。実物とやらに、人間の想像力をぶーぶー言われても、どうしようもない。

「まぁ、君らはまだ子供だもんね。小さな子の想像力なら仕方がないか」
「そっちだって見た目俺らと変わんないだろ!………、……いや、まさか…」

キラは、にやぁ…と意味深で性格の悪い笑みを浮かべた。まさか。まさかまさか。

「ま、ご想像にお任せするよ」

シンはぐるぐると頭をフル回転させながら汗を垂らしたが、結局答えなど出るものでは無かった。

「いや!実年齢よりも見た目だから!大事なのは精神年齢だからな!」
「その発言が既に子供だ」
「ははっ、そのとーり。レイ、良いこと言うねぇ」
「お前はどっちの味方なんだよっ、レイ!」

我関せず、でレイは視線を逸らした。


「でも、本当に羽根や翼は無いんですか?」
「ん?気になるの?」
「持ってない、とは言いませんでしたよね」

なんでレイには素直に応じるのだ。
ムッとするシンをよそに、キラは考え込む仕草をした後、呟いた。

「羽根はー…、………これ?」

手首に巻き付いた、真っ白のブレスレット。

触ってもいいというから降れてみたら、何かの毛皮?尻尾?…ふわふわとした純白のファーのような質感があった。

確かにイメージは似てるけど。

「………」
「………」
「あれ。完全に信じてないね」

当たり前だ。頬を掻くキラをじっとり見詰めるが、本人は飄々としたまま。

「別に信じようが信じまいが、どっちでもいいけど。…それより、こう…キーを叩くようなゲームはないの?」

キラの興味は既に移っていた。

「それがどうしたって?」
「多分、僕はそっちの方が得意な気がする。ね、やらせてよ」
「気がするって…」
「僕、コンピューター関連の操作を見るのが、特に好きでさぁ」

よく眺めてたんだよね。
俗物感満載で人間の営みを眺めているらしい、自称天からの遣いは、そう呟きながら部屋をきょろきょろ見渡した。

「あんたが好きになるものって変わってる…」
「そう?…人に対して興味があれば、当然向けられる対象でしょ」
「そうか?」
「機械類を扱って、情報を見えない糸で繋いで…指先一つで何でも出来る箱を生み出したことが、人間の発展させた文化の最たる進化じゃない?」
「…それは…、そうかもしれないけど…」
「だから、特に興味深いね」

その薄い紫の双眸には、ケージの中を見詰める観察者の眼と、新しい玩具を手にした子供の無邪気さが合わさっていた。

それに底知れない叡知と冷徹さを感じたのは、シンだけでは無い筈だ。ちらと見たレイの表情も、幾分強張っていた。

しかし、その比率はすぐに子供のそれに傾き、キラは笑った。好奇心を抑えきれない言わんばかりの輝きに。

「僕は、プログラミングとかの方が得意だな。ね、キーを叩くタイプのシューティングゲームとかはないの?」

目をきらっきらさせて、シン達を振り返った。


そうして再開したキラとシンのゲームバトル。

パソコン回線から引っ張ったシミュレーション用模擬戦を呈示した瞬間、キラの目付きがきらんと閃いた。


「やった!今度も僕の勝ち!」
「なんなんだよこの差はー!」
「やっぱりキーの打ち込みタイプは、僕の方が強いね」
「もう一回!」

先程とは立場が逆転した掛け合いが、レイの目の前で繰り広げられるのだった。







 






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