27//ひとひらの





「あ」
「……チッ…」
「お疲れさま、シン」

館内でバッタリ会った三人の第一声は、ある意味分かり易かった。



出会い頭にお疲れと微笑まれて、少し照れてしまった。

「お疲れさま…です。キラ…さん。………とアスラン」
「俺はついでか」
「人の顔見た途端に舌打ちする人間に何言えってんですか」

付け加えただけマシでしょーが。
そう眼が語っている。

噛み付かれた相手はそれに眉を寄せた。
不機嫌になるのは当然だが、突っ掛かるのも大人気ない。アスランは無表情でキラの肩を掴んだ。

「行くぞ、キラ」
「うん。…じゃあね、シン」
「あ…っと、ちょっと待って下さい!」

なに?と振り返る顔に、声を掛けたシンこそが戸惑った。

「あー…、と」
「用がないなら呼び止めるな。時間の無駄だ」
「なんであんたにンなこと言われなきゃなんないんだよ」
「まあまあ。二人とも」

雰囲気的に良い関係ではないと今までの空気で知っているキラは、二人の仲裁に。
そうしてその目は、シンに向き直った。

「僕に何か用がある?」
「えと…あの、……これから仕事…ですか」
「うん、そうだけど。それが?」
「昼間、見掛けなかったから…」

いつもなら、ローテーションの予定が無くても顔を出していたのに…。

ああ、とキラは表情を崩した。

「午前中は休みだったから、アスランと小さなお花見をして来たんだ」

その帰りだよ、と笑う顔はとても好きなのに、その後ろにいる人間の勝ち誇った笑みが気に食わないことこの上ない。…優越感出しやがって…。
ぎりぎりと怒りを募らせていたら、アスランは益々煽るようなことをして来やがった。

「キラ、髪に付いてる」
「え?なに?」
「ほら。さっき付いたんだろ」

キラの髪にいつの間にか付いていた桜の花びらを手に取り差し出した。

「ああ、ホントだ。ありがとうアスラン」
「いや」

愛想の良い笑みは親友へ。
ニヤリ笑いは違わず後輩への牽制に。
この…っ。

「もう行くぞ。シンは特に用が無いみたいだし」
「そうなの?大丈夫?」
「あ…、はい…です。…今は特に…」

嘘を付いてまで引き留める理由もなく、シンは項垂れた。

「そう。…今日は自分、夕方過ぎまでいると思うから、何かあったらコントロールルームまで来るといいよ」
「はい。…じゃあ、この辺で」

情けない。
さっさと去ろうとした。



…のに。



「あ。ちょっと待って、シン」

「え」


逆に呼び止められて思わず固まってしまった。
緊張しながら振り返ると、近くに寄ってきたキラが、


「はい。コレあげるよ」
「え…」
「ただの桜の花びらだけどね。お花見をお裾分け」
「………」
「あ、呆れてるね。ま、これで我慢してよ。今度、綺麗な桜の名所を教えてあげるから」
「キラ!」
「はいはい。今行きま〜す。……じゃあね、シン」

また、と言って、そのままアスランと連れ立ち角を曲がっていった。







「おい、シン。こんなところで何してる。呼ばれて…」
「レイ」
「どうした」
「生花の永久保存方法って何かないかな」
「……何だって…?」
「俺、ホントどうしよー…」


手のひらの花びらを抱えて、ついでに頭も抱えて、しゃがみこんでしまうしかなかった。













TITLE46






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