26//花雪
「…―――アイスプラント…」
「何か言ったかな」
「いえ」
そうか、とその横顔を見て笑みを浮かべる。
「なかなかに良いネーミングセンスだな。アイスプラントとは」
「聞いてたんじゃないですか」
おや、と思った。…その、柔らかな雰囲気に。
こちらは見上げた瞳は美しい紫色。
それは彼の感情を分かり易く現すものだったから、その透き通るような色は珍しい。
表情も、いつもの不機嫌さが成りを潜めている。呆れてもいない。……むしろ。
「珍しいね。君が私の前でそういう顔をするのは」
「…そうですね」
意外だな、と思わず瞬きを一つした。
「素直でもある」
「今日は少し、機嫌がいいんです」
「何故…と聞いてもいいかな」
「………綺麗な花を見ました」
それが、アイスプラント。
「アイスプラント……凍れる星…か?」
貴方が言うと皮肉のようだとくすりと笑う。
…本当に珍しい。
「けど違います。そういう名前の花があるんです」
葉と花の周りに結晶を造り身を護る花。
それが氷のように見える、と彼は語った。
「ふむ」
「白くてとても綺麗でした」
「それは、抽象的な意味ではなくて?」
「いいえ」
「珍しい花だな」
「確かに、氷の花と呼ばれるものは沢山ありますよ。表現としても、例えとしても」
でも、僕が見たのは本物の花。
いつか地球に渡ることがあれば、見つけてみるといいです。
沢山の『氷の花』を。
「白くて透き通っていて…どんな世界であっても枯れずに咲く、綺麗な花です」