+ 七夕七夜 +








カラフルな短冊に、願いを込めて。


あなたは何と書きますか?







CASE:D

【遊び相手と遊ぶ時間が欲しい】

「………まだ、足りないの?」
「あればあっただけ欲しいモノだろ」
「遊び相手って…」
「ま、言うまでもないよな!」
「………」
「なーに嫌そうな顔してんだ〜?」
「………」
「お前が書けっつったんだからな。責任持って叶えろよ?」
「……………ディアッカウザイ」
「うざ…っ、…言ってくれたなこのヤロウ!」
「いたいいたい!」
「遊ぶ相手は付き合いの長ーい誰かさんが叶えてくれて、遊ぶ時間もその誰かさんが作ってくれるんでしょうねぇ」
「はーなーせー!どうしたって僕巻き込まれるんじゃないか!」
「それこそ今更、だろ?諦めなさーい」







CASE:Y

【       】(白紙)

「何もないな」
「…………」
「何だ。不満そうだな」
「…(はぁ)…いや、何となく予想できたし」
「なら何故聞いたんだ」
「一応ね。あるなら聞いてみたいなーと思ったから。折角の七夕だし」
「自分の力で叶えてこその望みだろう。他人に見せて何の意味がある」
「そういうと思った。…でもさ、ほんの少しでいいからその手助けができれば、って思うのはダメなのかなぁ」
「………」
「まぁ、無理強いすることじゃないけどね」
「………」
「そのうち書きたいこと出てきたら」
「なら、助けてもらおうか」
「え?」
「言ったからには、残業を覚悟しろよ」
「………、……そう来るか…」
「ふん」
「いいですよ〜、別に」
「行くぞ」
「………まったく。欲しいのは、一緒に働いてくれる人ってことね。……イザークも素直じゃないなぁ…」
「何か言ったか!?」
「いいえー?」







CASE:R

【現状維持】

「これって、何もないってこと?…僕の友人が書いたのと一緒なんだけど…」
「一緒?」
「今のままでいいから、特に願いごとは無いってことじゃないの?」
「前半は当たってますが…、後半は逆ですよ」
「?」
「今のままでも充分だから、変わらないままであることが一番いいと思ったんです」
「…それって…願いごとになるのかな?」
「そう望んでる人は結構多いと思います」
「そ…っか…、そうだといいなぁ」
「はい」
「レイも、今が幸せだってことだよね」
「………そうですね」
「ふふ。その言葉が聞けただけでも、短冊を持ってきた価値があったね」
「満足ですか?」
「うん。大満足」







CASE:S

【 ★ 】

「これって星の絵?」
「は、はい!えっと…」
「七夕だから、星ってこと?」
「え……と…」
「ああ。七夕にちなんで星が見たいとか、そういう感じ」
「………。……まぁ…そんな感じです…」
「ふーん。案外シンもロマンチストなんだな」
「(そういう意味じゃないんだけど…)」
「じゃあ今度、星座でも探しに出かけてみる?」
「!!…いいんですか!?」
「あれ。星が見たいから短冊に描いたんじゃないの?」
「あー…それはですね…」
「随分子供みたいな可愛いこと描いたよね」
「………きらきらぼし(ボソ)…」
「…?…何か言った?」
「何でもないです!星、絶対見に連れてって下さいね!約束ですからね!!」







CASE:G

【世界平和】

「……………」
「素晴らしいと言ってくれないのか?」
「………偽善者…」
「おや」
「外面に対して理想的過ぎて逆に引きました」
「人類共通の願いじゃないかな」
「世界征服って書かれた方がまだ納得できる」
「それは壮大なことだ」
「結局、議長に願いごとはないってことですね」
「無いわけじゃないが…。多分、誰にも叶えられないことだ。だから表には出さない」
「ああ、あるにはあるんですね」
「…そうだな」
「なら、別に読んだりしませんから書いてみて下さい。…届くかもしれませんし」
「何処に?」
「どっかに」
「…だといいけどね。この年齢にまでなると、夢と現実は対極になるんだ」
「………、………せめて今日みたいな夢のある日にくらい、プラント議長って立場を離れてもいいんじゃないですか」
「立場ではなく、私自身の意見だよ。それに、……自分にではなく、次の世代に夢を見たくなるものだから」
「次、ですか?」
「ああ。だから、君にあげよう」
「何も書いてないです。戻ってきただけじゃないですか」
「そうでもないよ」
「よく分からないんですが…」
「そのままだ。…君に、願いを託すよ」







CASE:A

【新しい工具とパーツ】

「なんか、アスランが一番具体的…」
「お前が欲しいものを書けって言ったから書いたんだが?」
「だって、他の人達に願いごと書いてみてって言ったら、抽象的なことばっかりで僕には叶えられそうになかったんだもん」
「叶えたかったのか」
「家からの延長、みたいな…。…まぁだから、せめて身近なアスランには直球で行こうかと」
「そもそも七夕の短冊って何なんだ」
「僕も詳しい意味はよく知らない。クリスマスの夏バージョン?って感じ?」
「じゃあお前は夏のサンタになって皆の願いを叶えて回ってるわけか」
「そこまで大袈裟なつもりはなかったんだけどさ。でも皆、短冊に書くような願いごとはあまりないみたい」
「夢と現実の違いだろう」
「うん。皆もそんな感じだった」
「所詮、軍人だからな…」
「でも、短冊一つで何となく皆の思ってることが分かって嬉しかったよ」
「そうか。…それで、お前は?…短冊に何て書いたんだ」
「まだ書いてない」
「なら、お前の願い事は何なんだ?」
「…僕は…、………そうだなぁ…」







CASE:K



「僕、砂漠に行きたいな」










WITH:



「って言うから付き合ってやってるのに、寝るんじゃない!」
「地球の夜は眠くなる…」
「わけ分からん。起きろ!」
「…ZZZ…」
「人にバギーの手配までさせといてお前は…!」
「いたっ」
「起きろ」
「…起きたよ」



「スゴい…スゴいよアスラン!地平線まで全部星だ!」
「ああ…。さすがに言葉が出ないな」
「砂漠の夜って凄いね。昼間は何もないのに、夜になると表情が変わる」
「究極の環境だから、ある意味ではゼロの眺めだ」
「何にもないもんね。汚れも遮るものも」
「雲もないしな」
「うん」
「でも、プラントからの方が、曇ることも気にせず星を綺麗に見ることが出来たんじゃないのか」
「それじゃあ意味がないでしょ。彦星と織姫のお話知らないの?七夕の夜に晴れるか曇るかで一喜一憂する恋人同士がメインの話みたいなものなんだから」
「…話が長い…イヤミか」
「一応、天気を気にする環境のところに降りてみました。七夕気分?」
「砂漠じゃほとんど雲は出ないぞ」
「まぁね。宇宙にいる僕達にしてみたら、天の川はいつも晴れてるけどね」
「だから地球じゃなくても」
「だから織姫と彦星は」
「…分かった。もういい」



「こうやってさ…、二人だけでのんびり星を見るのってどれくらいぶりかな」
「砂漠からは、さすがに初めてだがな」
「一度来てみたかったんだ。どんなに高いところから見る星よりも綺麗だぞ!って言われたから」
「誰に…いや分かった」
「まさにその通りだったな。プラント一高いビルから見た星よりも、ずっと近くに感じる」



「寒くないか?」
「平気だよ」
「そうか。なら良かった」
「でもちょっと…」
「………、……何してる…」
「へへ。この格好の方が楽ちんだ」
「お前…」


星は、不動に夜空と世界を取り囲む。


「アスラン」
「何だ?」
「僕も、短冊に書きたいこと、決まったよ」


果ての大地。
果ての空。

幾億の星々が、特別に見える夜。


けれどやっぱり願うことは【変わらないまま】であること。

隣に誰かがいて、穏やかに日々を過ごして、空と世界を美しいと感じ続ける毎日が在ること。





色とりどりの短冊に、願いを込めて。


そして、星に願いを。空に祈りを。



人に、想いを―――。



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