21//懐かしさの断罪
地球の孤島から、空を見上げた。
太陽の鮮烈な白の中、柔らかく浮かぶ影。
ここからでは遠く、まだぼんやりと霞む。
…―――――真昼の月。
「今日も見えてる。消えなくて、本当に良かった」
「そうだな…」
あの闘いで月に向けられた砲火は、一瞬にして月面からあらゆる生命を奪った。
見せしめのように放たれ、無差別に奪われた多くのもの。
それは、二人にとっても例外ではない。
罪の軌跡に重なる影。
攻撃を起こした者には、知ることもなかった景色。
あんな瞬間で消されてしまうほど、あの地での思い出は弱くはなかった。
だがきっともう、あの地に優しい色はない。
今は思い出の中にしかなくなってしまった、美しい桜の記憶。
「今は黒い大地になってしまっても…、いつかは」
「ああ。きっとまた見られるようになる」
「また…、…今度は、出会った人たち皆と、あの時の風景を見られたらいいね」
あまりにも。
泣きたくなる程の優しさに溢れていたから。
「あの月が無くなってしまわなくて、本当に良かった」
月に想うのは懐かしい幸福の色。
出逢えたキセキ。
その風景は、こうして見上げた月に蘇る。