15//そんなふうに見ないで





「レイ」
「…え…、……え…!?」
「人と離す時はしっかりと相手の眼を見て。そう習わなかった?」
「は、いえ、とにかく手を離して下さい!」

接触を拒否すれば、頬に触れられていた指先が、スッと離された。
ほっとして思わず相手を見上げるも、……紫の瞳とぶつかりすぐに目を逸らしてしまう。

視界に入った薄い口元。…それが少しだけ、歪んだように見えた。

「レイ。君は最近、僕のことを見ようとしないね」
「いいえ、そんなことは」
「少なくとも眼を直視することはなくなった。君らしくもない」
「………」
「理由を聞いてもいい?」
「………」
「僕の顔が気に入らない?」
「…そんなことはありません」

再び上げた視線は、優しい笑顔とぶつかった。

「じゃあ、どうして?」
「………、……あまり」
「うん」
「…………好きではないものですから…」
「僕の顔が?」
「違います。……自分自身の顔が」
「キライ?」
「………」
「うーん、…悪いんだけどよく分からない」

君の顔の良し悪しは、今更周りに聞くまでもないから、この際聞かないよ。
どうして自分の顔が好きじゃないのかと云うことも。

「けどどうしてそれが僕の顔を見たくない理由に繋がるの?」
「………、……貴方の眼は、大き過ぎます」
「はい?いきなり僕の顔評価?やっぱり万人ウケしないのかなこの顔は…」

コンプレックスでもあるのか…眉間に皺を寄せて、ぶつぶつと何かを考え込むその人に、もう一度、違います、と声を掛けた。



「見たくないものを鮮明に映し過ぎるんです。貴方の眼は」












「よし。じゃあ、こうしようか」
「は?」
「君が慣れるまで…平気になるまで、隣同士で歩いて話そうか」
「………」
「それなら僕はレイと一緒に話が出来るし、レイが見たくないと思うものは見えない」



それに。





「僕はレイの顔が好きだから、だから横顔でもずっと見ていることが出来るなら、とても嬉しいよ」



一石三鳥だね。





そう言って、かの人は…もう一度だけ綺麗に微笑った。















TITLE46






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